不確定な未来─1

2010年03月31日 08:58

"不安解消プロジェクト"と自分一人で勝手に銘打って書いたのが打ち明け話系。
もうお話というよりも、自分の中の設定、というだけになっております。
今回は以前ちらっとお話をいただいた「だるまや」編。ちょっとだけ長くなりました。
そんな楽しいお話でもないので、お気の向いた方だけどうぞです。
副題「幸せの病」。


1.不確定な未来─Ren

深夜にふと目が覚めた。
隣には……愛しい彼女。
穏やかに、ほんの少し微笑みをたたえるかのように眠る彼女の寝顔に、つい顔が緩む。
やわらかいその頬に軽くキスをひとつ。
そして再び目を閉じるが、どうしても眠れなくなった。

たった今、彼女にキスをした幸せな気分とは真逆な、昏い何かが胸の中に大きく広がった。
部屋の中の闇が急に襲ってきたかのようなその気分に耐えられず、彼女を起こさないようにそっとベッドを抜け出した。

突然自分の中に現れたその症状を少しでも回復させるためにリビングの灯りをつける。
軽く溜息をつきながらソファに座った。
静寂にさえ耐えられず、TVまでつける。

映ったのは───真っ暗な闇。

軽く舌打さえして、チャンネルを変える。
淡々とニュースを読み上げるアナウンサーの姿を認めると、極力音量を落としてしばらくぼんやりと眺めていた。
一向に現れてくれない睡魔に痺れを切らし、キッチンへ向かう。
グラスに氷を適当にいれ、銘柄も確かめずボトルを一本持ち出す。
再びリビングへ戻るとソファに座り、興味もないニュースに耳を傾けながら飲み始めた。

(多分……最近会えていなかったから……かな)

陰鬱な気分を誤魔化すかのように、冷静に自分を分析する。
ここのところ仕事が忙しくて、彼女とはまともに会えていなかった。
ようやく時間が出来た今夜、少し無理を言って彼女にマンションまで来て貰った。
久しぶりの彼女の感触を十分味わって、ついさっきまで幸せな気分で眠っていたのに。

なんの問題もないというのに───

自分の今いる状況を改めて思い返す。
仕事は順調。
長い間、恋焦がれていた彼女もその手に入れることができた。
付き合い始めに付き纏っていたわずかな不安も最近は解消された。
何が来ても二人一緒に、と約束もした。
これ以上はないという状況で、なぜこんなにも暗い気持ちになるのか。

(贅沢…なんだろうな、俺はきっと)

今が幸せすぎて、後はこれが壊れる日が来るだけのような気がしている。

これ以上彼女に何を求める?

ただでさえ、彼女に無理をさせる事が多いというのに、一体なにをさせようって言うんだ。
理不尽すぎる我侭な自分を戒めるために、あえて認めたくない自分の欲求を形にして見る。
求めているのは、現状の維持。
より一層の安定。
彼女との繋がりを強固なものにしたい。

結婚?

頭の中にすんなりと浮かぶその二文字。

でも彼女はまだ未成年だ、早すぎる。

彼女以外は考えられない自分はいつだって準備は出来ている。
しかし、彼女にはまだ早い事だろう。
そう……まだ早い……

……………。

「はは…」

ようやく今の自分の暗い気持ちの原因に気が付き、思わず声を出して笑う。
簡単な話だ。
彼女の未来に自分がいない可能性がゼロじゃない事に脅えていただけだ。
最近の彼女の成長ぶりに、どんどん綺麗になっていく彼女に、置いて行かれそうで不安になっていただけ。
久しぶりに呆れるほど情けない自分に出会って再び哂う。
真夜中に起き出してこんな事を考えて暗くなっている暇があるのなら、彼女を放さないようにする努力をしていた方がいい。

「馬鹿だな…」

思わず漏れてしまった呟きを一緒に飲み込むようにグラスを煽る。
早く寝た方がいい、そう思ってグラスの中身の残りを飲み干した時

「…敦賀さん?」

後ろから彼女の声が聞こえた。
少し驚いて振り返る。

「どうか…しましたか…?」

扉からそっと顔を出し、俺を見ている彼女の表情は…どこか不安げだ。
そんな顔をさせてしまった自分の行動を心から後悔する。
彼女はそのままそっと俺に近づいてきて…一緒にソファに座わり身体を寄せてきた。
いつもとはほんの少し違うその彼女の行動に胸が締め付けられる。

「なんでもないよ?ちょっと目が覚めて眠れなくなっただけ」

精一杯穏やかに笑って彼女にそう答える。
でも彼女の表情は変わらない。
さっきまでの自分の暗い気持ちがそのまま移動してしまったかのように不安な様子で俺を見る彼女。

「…お疲れ…なのではないですか?最近とても忙しそうですし…」
「大丈夫、今日はキョーコに会えたし」

そう言って彼女の華奢な肩を抱いて思い切り引き寄せた。
これ以上、彼女の暗い表情を見たくなかった。

情けない自分を誤魔化すように
「ごめん、起こしちゃったかな?もう寝よう」
出来る限り明るくそう言ったが、彼女の表情は晴れない。

せっかくの二人一緒の夜にそんな顔をさせてしまった事をもう一度後悔して、どうしたら彼女が笑ってくれるかを考えていた時。
突然、彼女が大きな声を上げた。




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