Lucky Lovers ─1 ─Kyoko

2015年07月02日 02:16

7月ですね!
久しぶりの更新でございます。
小ネタ系ですが、細か~く続いちゃうので全11話です。なぜこんなに長く…orz
そして、初夏だというのにホワイトデーネタという、思い切り季節ハズレな内容になっております(汗
4月中にUPできたらなぁと思ってたのにもう7月だなんて!
時の流れが早くて困っちゃいます、なんて言い訳してみたり。
一年寝かそうかとも考えましたが、それもどうだろうと思ったのでUPしてしまいますっ。
季節ハズレでもOKだよ!という心広い方にどうぞです~


Lucky Lovers─1 ─Kyoko




今日は朝からツイていなかった。
携帯を忘れて家を出てしまい、取りに戻ったせいで、時間の余裕が無くなった。
遅刻はせずに現場入り出来たものの、時間ギリギリだったのを仲の悪いプロデユーサーに見られて嫌味を頂いた。
今回のゲストは今人気急上昇中の女性タレントさん。
歯に衣着せぬ物言いは小気味良かったのだけれど、本番が台本とは大幅に違う流れになり対応に戸惑ってしまった。
結果、収録は無事終わったものの、私だけでなくスタッフの人達も皆、なぜか最後にお説教を食らってしまった。
やっと解放され、へとへとになった私が局内を歩いていた時、偶然、彼を見つけた。
今日、ツイていなかったのはこのためのものだったんだ。
そう思った私は飼い主を見つけた犬みたいにしっぽを振って彼の元へ駆けつけようとしたのだけれど、彼の周りにはたくさんの人が居た。
廊下の角に貼り付いて人が居なくなるのをじっと待つ私はどうみても怪しい女で、しかもちょっと察しが悪い。
彼の周りにいるのが女性ばかりで、仕事の話をしているわけではないという事に気付くのに随分と時間が掛かってしまった。
今日は3月14日。
笑顔の彼が、笑顔の彼女達に渡しているのは恐らくホワイトデーのお返し。
見たことのない可愛い包装の小箱を、次々と彼女達に手渡す彼と受け取って喜ぶ女性達。
その様子を延々と眺め続ける羽目になってしまった私は途中で心が折れ、そのまま気が付かれないようにその場を立ち去った。
やっぱり今日はツイていない一日だったのだと痛感する。
そんな私は、まだ彼からはお返しは貰っていなかった。
昨夜は私も彼も帰宅が遅くて、私は先に眠ってしまっている。
そして今朝はお互い慌ただしかったので、彼とまともに朝の挨拶も出来ていなかった。
ここの所、お互い忙しくてこんな事が多い。

「……早く帰ろっと」

お返しを要求するようになってしまっている自分に気が付き、そんな自分を戒めながら帰り道を歩く。
それでも、飴玉一個でもいいから誰よりも早く貰いたかったなと思う気持ちが消せなかった。
もしかしたら家に置いてあるのに私が気が付かなかっただけかもしれないなんて思ってしまう。
帰るなり部屋の中をあちこち見て回ったけれど、それらしき物は見つけられなかった。
大きな溜息をついた後は貰う順番なんて関係ないと思い直し、シャワーを浴びたり明日の予定の確認をしたりしながら彼の帰りを待つ。
昨夜はちゃんと話も出来なかったから今夜は起きて待っていよう。
そう思ってリビングのソファに陣取っていたのに、気がついたらベッドの中で、しかも朝だった。

「……うそっ」

びっくりして飛び起きたのに、彼の姿はどこにもない。
朝からまた大きな溜息をつき、落胆しながらリビングへ向かうと、テーブルの上に小さな箱が一つ。
白いレースが飾りに付いたピンク色の可愛いリボンが掛けられた包み。
見た瞬間に顔がにやけてしまった。
そっと手に取り、細長いその小箱の包装をゆっくりと解いていく。
中には猫の顔を型どった可愛いチョコレートが五つ並んでいた。

「……白に三毛に黒……これはキジトラと……ロシアンブルーかな? 可愛いっ」

彼にしては珍しいチョイスだと思ったけれど、可愛い猫達はとても気に入ってしまった。
携帯で写真を撮り、もう仕事に行ってしまったのだろう彼に御礼の言葉と一緒にメールで送った。
さて、どうしようかなと思い、にやけたまま戻らない顔で猫達を眺めていた時、携帯が鳴る。
彼からの返事だと携帯に飛びついてメールを見てみると『ごめん 間違い 食べないで』という短い言葉の羅列。

「えっ」

私のものじゃないんだとすぐに察した私は、慌ててチョコを箱に戻し、包装を元に戻し始める。
丁寧に扱っていてよかったと思いながら、ピンクのリボンも最初に見た時と同じ様にきっちりとかけ直した。
開けた形跡を完全に消せたかどうか確認した後、小箱をテーブルの上の元の位置に置く。

「…………」

暫くの間、黙ってチョコの小箱を見つめていたけれど、出掛ける時間が近づいて来たのでノロノロと身支度を始めた。
食欲がなかったので朝食は食べない事にする。
きっと今日もツイていないんだろう。
そう思いながら仕事に行くために部屋を出た。



「おはようございます」
「おはよう京子ちゃん!」

昨日と同じ現場で今日も仕事がある。
今日は始まる時間が遅めだった事もあり、時間にかなり余裕をもって来たので、何事もなく準備に取り掛かる事が出来た。
今日のゲストを控室まで『坊』でお迎えに行く簡単な打ち合わせをしていた時。
急に後ろから軽い衝撃を感じた。
驚いて振り向いてみると、溢れんばかりの笑顔で『坊』に抱きつく、まだ幼さの残る美少女が居た。

「坊だ~! 嬉しいっ」

サラサラとした茶色の長髪に白い肌。
ぱっちりとした大きな瞳が印象的な最近人気の子役の少女。
この子が今日のゲストだった。

「あぁ、申し訳ありません! この子は坊が大好きで……ダメよ、控室にいないと!」

いつの間にやって来たのか、マネージャーらしき女性が制止するのを振りきって、彼女は本当に嬉しそうに『坊』に抱きつく。
そんな彼女の前で、私も本番前から全力で『坊』になった。

「ねぇ、ねぇ、これ見て! 可愛いでしょう?」

ニコニコとしてテンションの高い美少女が、一生懸命アピールしている首元のネックレスに目を向けた。
シルバーのチェーンに、淡いピンク色の石が花の形で散りばめられたヘッドのネックレス。
どこか大人びた風に見えるそれは彼女が動く度にキラキラと輝いて本当に綺麗だった。
素直にいいなぁと思ったから、その事をジェスチャーで伝えると彼女はとても嬉しそうにはしゃいだ。

「ね! いいでしょう! これ、さっき敦賀さんから貰ったの!」
「……っ」

いきなり彼の名前が出てきて『坊』は飛び上がる位に驚いた。
正しくは『坊』に成りきっていた私の最大級の驚き表現。

「ホワイトデーのお返しで頂いたんですよ。この子、もうすごい喜んじゃって」

少女のマネージャーがそう言った。
それを聞いた私は、先月、彼はこの子と共演中だった事を思い出す。
再び大袈裟に驚いて見せた後、『坊』は少女と手を繋いでくるくると回って遊んだ。
その後の本番もずっとその調子で、ご機嫌な少女のハイテンションに合わせ続けていた。
ずっとずっと。
頑張りすぎて収録後に立てなくなる程に。



「うー」

局からタクシーで帰って来た私はまだちょっとフラフラしていた。
変な汗が出るし、ちょっと気持ち悪いし、とにかくダルくて仕方がない。
頑張りすぎたのも原因だと思ったけれど、生理中でいまいち体調が良くなかったのに不摂生した自分が悪いと思った。
今朝は朝食を抜いたりしたし、昨夜の食事も簡単に済ませてしまっている。
それでも収録は無事に終わったし、明日はオフでよかったと思いながら、回復に努めるためにゲストルームに引きこもる準備をした。
帰って来た彼を心配させないように、出来るだけ明るい感じで現状をメモ用紙に書き記す。
そして、うっかり出て弱っているのを彼に悟られないように携帯をリビングに放置する事にしてメモと一緒にテーブルの上に置いた。
シャワーも浴びずに廊下の壁沿いをヨロヨロと移動しながらゲストルームへと向かう。
そんな私の脳裏に浮かぶのは、あの子が付けていたキラキラ光るネックレス。
彼が用意する他の人へのホワイトデーのお返しは、チョコやクッキーなどのスイーツ系だと勝手に思い込んでいた私には少しショックな品物だった。
でもよく考えてみれば、バレンタインだって必ずチョコというわけでもないし、彼ならもっと値の張る物を貰っていてもおかしくない。
ファンから贈られた物はともかく、仕事を一緒にする人からだったら当然それなりの物をお返しとして用意するだろう。
そんな事にも思い至らない上、僻んだり、なかなかお返しが貰えない事に不満まで抱き始めた私。
今のこの状態は正に罰が当たったとしか思えなかった。

「ふぅ……」

ベッドにボスンと倒れこんだ後、神様に心の中で呼び掛ける。
醜く狭い心は全て捨て去ります。
下された罰も甘んじて受けますので、どうか明日には回復させて下さい。
心の底からそう願って目を瞑る。
そうしてゲストルームのベッドの上から深い深い反省の海の底へと沈んでいった。



コメント

  1. モコ | URL | SFo5/nok

    初めてコメントすると思いますが…
    ずっと見てました!そして新作待ってました(≧∇≦)
    今回もやっぱり面白いです★次の更新楽しみに待ってます!(実際の気持ちは「早く…早く続きを…マダカナ((o(= ̄¬ ̄=)o))マダカナ」)

    本誌はもう買ってないので、こちらの感想もいつも楽しみに読んでます!助かってますー(o^^o)

  2. | |

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  3. Kanamomo | URL | -

    コメントありがとうございます!

    >モコ さま
    コメントありがとうございます!
    随分と久しぶりになってしまいましたが、やっと更新ですっ。
    面白いと言って頂くと嬉しいです!頑張りますのでよろしくお願いします~
    本誌感想も楽しんで頂けてましたら幸いでございます☆
    ありがとうございました!

  4. Kanamomo | URL | -

    コメントありがとうございますっ。

    >ちょび さま
    コメントありがとうございますっ。
    久々の更新となりましたが、喜んで頂けたら嬉しいです!
    ちまちまと書きすすめていたら予定よりも長くなってしまいました。
    間違えちゃった敦賀さん、これから色々とありますが、楽しんで頂けたらと思います。
    ありがとうございました!

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