真夜中の電話─1

2014年02月10日 23:38

敦賀さん誕生日おめでとうございまーす!

キョーコ誕生日とかクリスマスとか何もしなかったので、今回はなんとか頑張ってみました。ギリギリでっす(汗
全5話です。またバレンタインまで続きます。
不穏な始まりではありますが、いつも通りでもあります←?w
よかったらどうぞです~


真夜中の電話─1







怒ったりしてはいけない
必死に何度も自分にそう言い聞かせた


俺の誕生日の夜
幸せな時間に水をさしたのは彼女の携帯電話だった

彼女と共演中の男が彼女の番号を知っていた事は少しショックだったが
相手は彼女だけでなく俺にとっても芸能界では先輩になる
今の現場は皆仲が良くていい雰囲気なのだと彼女が絶賛していた事から推し量れば
頑なに教えないというわけにはいかなかったのだろうと思えた

リビングの隅で交わされる彼女と男との会話
特に緊急の用事があったわけでもないようで、他愛のない話が続いていく
少し苛立ちを覚え始め
聞かないほうがいいと思うのに、耳を塞ぐ事が出来ない
それどころか室内の静寂さが手を貸して
妙に研ぎ澄まされてしまった俺の聴覚が
相手の話し声までも聞き取ろうとしてしまう

「えっ!」

彼女が小さく驚きの声を上げる
俺まで少し驚いた
そして、その後の彼女の受け答えで
男が彼女を口説き始めたらしい事に気づき
彼女の元へ行き、その手から携帯を奪いたくなる衝動が起こる
必死で堪え続けた俺の、我慢の限界が来る前に
彼女はちゃんと好きな人がいると言ってくれた
その時、若干、言葉を濁していたりもしたが
今はまだ秘密の関係と言えるから
仕方がない事だと考え、不満は俺のマネージャー辺りに向けておく
彼女がきっぱりと男を退けてくれたので
そろそろ終わるだろうと思った電話での会話は
なぜか妙に長引いていて
一旦落ち着いた心が再びざわめきだした

「あ、あのっ! 問題なんてないですから! 本当に!」

問題とはなんだ
苛立ちを抑えきれなくなった俺が
思わず立ち上がり、彼女に近づこうとした時
彼女の声が妙に大きく室内に響いた

「は? キープ? キープって…………まさか、そんな! そんなのとんでもございませんっ!」

彼女が何を言っているのか
一瞬、理解出来なくて戸惑い、立ちすくむ
電話口で慌てふためいている彼女の姿を見つめながら
会話の流れを聞いているうちに
男が何を言っているのか、分かって来た

「大先輩が私などのキープだなんて、私に罰が当たりますっ……いえ、あの、気にするに決まってるじゃないですか! 本当にそんな事」
「…………」

はっきりと断られてもなお、食い下がる男の存在に
もやもやとした黒い霧のようなものが胸の中に立ち込めた
ずっと胸を焦がしていた嫉妬心と
それを抑えようとする気持ち
全てが混ざり合い、爆発してしまいそうな感情が
何を仕出かすかわからない自分を呼び覚まそうとする

彼女には何の非もない
怒ったりなどしてはいけない

リビングのテーブルの上に
彼女が俺のために作った、食べ掛けの小さなケーキ
ソファの上に
彼女が選んでくれた、プレゼントの黒い手袋
それを俺に渡す時の彼女の笑顔
さっきまで耳元で聞いていた甘い囁き

部屋の中にあった優しいもの達の手を借りて
怒り狂う凶暴な俺を
全力で胸の奥底に封じ込める

「あ……あの……敦賀さん」

長い電話が終わった後、彼女は今にも泣きそうな顔で俺に呼びかけた
さっきの笑顔が嘘のような、その悲しくも不安げな表情に心が痛む

彼女をそんな顔にさせたのは俺か、それとも電話の男か
彼女に見せたくない醜い感情を全て封印しきった状態で俺は微笑む

「こういう事もあるよね……仕方ないよ。キョーコは悪くないし」
「でも……」
「気にしないで……もう大分時間が遅くなってしまったから……そろそろ片付けて寝たほうがいい」
「……はい」

精一杯、優しく微笑んでいるつもりなのだが、彼女はどこか沈んだままだ
大丈夫、気にしていない
君は何も悪くない
そう言って優しく抱きしめればいいと思うのに
どうしても口も身体も動かない
今、彼女に触れたらどうなるのか
自分でも自分がわからない

俺の気持ちに敏感な彼女から
渦巻く黒い感情を隠し切る事だけに専心したせいで
ぎこちなくなっていく、俺の彼女への態度
でも、今の俺に出来る精一杯は
封じ込めたものが飛び出さないようにしながら
いつもと変わらずに微笑んでいる事だけだった



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