23 エピローグ

2013年12月17日 10:09

最終話になります。
長い話になりましたが、皆様の拍手のおかげでへこたれる事無くw無事UP完了となりました。
お付き合い下さった方々、どうもありがとうございました!


23 エピローグ



蓮から有香の話を聞かされた日から数日後。
呼び出された社長室で、キョーコは有香に会った。
会うなりすごい勢いで頭を下げる有香にキョーコは驚き、恐縮し、気がつけばお互い頭の下げ合い合戦になってしまっていた。
社長の取りなしで、なんとか普通になった有香は、真面目で大人しそうな女性で、ロケ中に会った時とはまるで違っている。
本当に『志保』に成り切っていたんだなと思うと同時にそこまで役に入り込むというのはどういう感じなのだろうかと、自分と比べて考えてみたりしていた。
丁寧な謝罪を改めて受けた後、キョーコは有香に結婚のお祝いの言葉を述べた。
恥ずかしそうに、でも、嬉しそうに微笑んでお礼を言った有香。
その表情をぼんやりと思い出しながら、帰宅するために所内の通路を歩いていると、後ろから聞き慣れた声に呼び止められた。

「キョーコちゃん!」
「あっ……社さん! お疲れ様です」

振り向き、ペコリとお辞儀するキョーコに、ご機嫌な様子の社が近づいてくる。

「今、帰り?」
「はい、そうです」
「計画通り!」
「へっ?」
「あぁ、いや、なんでもないよ~。立花さんとは会えた?」
「はい、会ってお話して来ました」
「そっか、よかったよ。彼女、気にしていたからね……で、俺は帰り際にちょっと寄っただけなんだけど……えーっとね」

社は持っていたバッグからガサゴソと何かの包みを取り出した。

「はいっ、これ、キョーコちゃんにプレゼント」
「えっ? プレゼント?」
「この間、いろいろ迷惑をかけたから謝罪の意味も込めてね……これ位じゃ足りない気もするんだけど」
「あっ……で、でも、そんな」
「いいの、いいの。そんなにスゴイものじゃないし、もう手に入れちゃったし、俺が持っていてもしょうがない物なんだよ」

少々、強引にその包みを渡され、困ったキョーコだったが、ここは素直に受け取るべきかなと思う。

「見ていいですか?」
「うん」

包みの中から出てきたのはキラキラ光るラインストーンが散りばめられている丸いコンパクトミラーだった。

「これ……」
「”ローザ”ちゃんが持ってたのとはちょっと違うかもしれないけど……アレは無くなっちゃったんだよね?」
「そ、そうですけど、あれは社長さんが用意したもので」
「社長は事が済んだら持ち物全部キョーコちゃんに渡すつもりだったって言ってたし……バッグは貰ったんだっけ?」
「頂きました。赤いバッグはケチがついただろうと言って、わざわざ色違いを用意して頂いたんです……もう充分すぎです」
「じゃあ、これも仲間に入れといてくれるかな。キョーコちゃんに似合ってたんだよねぇ、あの魔女っ子アイテムみたいなミラー」
「魔女っ子……」

社のミラーの呼び方に、キョーコは食い付いてしまい、つい色々なマジカル妄想を頭の中に思い浮かべてしまう。
気が付くと、キョーコの手にそれを残したまま、社は明るく手を振ってその場を立ち去っていた。

「じゃあね! お疲れ様!」
「あ、あ、あ、ありがとうございますっ! お疲れ様でした!」

遠くから挨拶する社に、キョーコは慌てて頭を下げてお礼を言った後、軽快な足取りで帰っていく社の後ろ姿を笑顔で見送った。
社の気遣いに、申し訳ない気持ちにもなったが、手の中のキラキラを見るとキョーコの顔は緩んでしまう。
大事に自分のバッグに仕舞い込んだ後、キョーコも帰路に着いた。




「なんだ、考える事が一緒だったみたいだ」
「へっ」
「一緒にいる時間が長いと似てくるのかな……困るな」

帰宅したキョーコは、既に部屋に帰っていた蓮に社からのプレセントの事を報告した。
蓮はそれを聞き、ブツブツと何か呟きながら社のものよりも一回り大きい包みを出してきた。

「あぁ、俺が買物してるのは知ってるから、その後に買ったのだろうね。先を越すとか、相変わらずあの人は酷いね」
「敦賀……さん?」
「はい、これ……俺もプレゼント。ささやかなんだけど」

蓮はキョーコに包みを手渡す。
キョーコは戸惑いながらも、受け取り拒否はまず無理だろうと思える蓮の圧倒的な笑顔の前でソロソロと包みを開けた。

「あれっ……これって」

出て来たのは白いシルクのキャミソールとショートパンツのセット。

「あの夜、着てただろう? 可愛いなと思ったから」
「……っ」

仄かに頬を染め、キョーコは上目遣いで蓮を見る。

「もうっ……どこで買ってきたんですか、これ……」
「ミス・ウッズに聞いて、あるお店に取り置きしてもらった。同じ物が手に入りそうだったからね」
「……敦賀さんが直接そのお店に行ったんですか?」
「大丈夫、ちゃんとしたお店だし、言いふらされたりしないよ」
「そ、それはっ、そうなのでしょうけど……」

それでも、対応した店員、恐らくは女性であろう、その人は一体どう思ったのかを考えると、キョーコは妙に落ち着かなくなった。

「そんなに気を使わなくてよかったのに……もう色々頂いてますし」
「これは無くなってしまったんだよね? すごくよく似合ってたから俺が欲しかった……のかな? あの時のキョーコは妖精さんみたいだった」
「えっ!」

”妖精”という大好物のキーワードを耳にし、キョーコのテンションは一気に上がったが──

「ベッドの妖精みたいな……」
「うぇ!?」
「シーツの妖精でもいいな」
「えええ!? なっ……な、何か違いますぅ」
「じゃあ、枕の……」
「敦賀さん!」
「妖精さんだよ?」
「でもぉぉぉぉ」
「いいと思うんだけどな……これ、シンプルなデザインなのに、キョーコが着るとすごく色っぽいし」
「……っ」

キャミソールを抱き締めながら、真っ赤な顔で微妙な表情をしているキョーコに、蓮は濃厚な夜の雰囲気を感じさせるどこか悪そうな微笑と共に囁いた。

「うちのベッドにも現れてくれると嬉しいんだけどね……色っぽい妖精さんが」
「…………」

不本意ではあるが、キョーコは妖精という言葉と色っぽいという響きを無視する事が出来ない。
あからさまな蓮の誘い文句に、キョーコは渋々ながらも、自ら進んで乗っていく。
顔を赤くしながらも微妙に怒った表情のまま、笑顔の蓮に着替えさせられた後、キョーコは寝室へと運ばれていった。


****


目を覚ました蓮は、ベッドにキョーコがいない事に気付き、むくりと身体を起こす。
大きく開けられているカーテンからは眩しい朝の光が燦々と差し込んでいた。
朝日を浴びる”妖精さん”を堪能するつもりで、昨夜、何も身に付けずに眠ってしまったキョーコに、起こさないよう細心の注意を払いながら”衣装”を着せていた事を思い出す。
目を覚ますのが遅かったのかと残念に思い、時刻を確認してみれば、いつもよりもまだ早い時間。
我儘としか言えない、ちっぽけな不満を抱え、蓮は寝室を出てリビングに入る。
昨夜のベッドの上では、白いシーツに溶け込んでいきそうな程の淡く儚い印象を受けた茶髪の白い妖精。
その妖精は、急いで着替えたのか、どこか着乱れた服装でリビングからバスルームの方へ元気よく駆けていく所だった。

「おはよう」
「あ! おはようございますっ! ご、ごめんなさい、私、今日、いつもより早い時間に出かける予定でしてっ……寝坊しました!」

キョーコはそう言って、慌ただしくバタバタとリビングを走り去っていく。
その後姿、後ろ頭の茶色い髪が見事にクルンと撥ね上がっているのが目立っていた。
蓮はキョーコの後を追う。
洗面台の鏡の前で服装の乱れを直しているキョーコに、鏡越しの笑顔で近づいた。

「後ろ、跳ねてる」
「あああっ」
「うん、ちょっと待って……俺が直すから」
「え」

ドライヤーを手に、キョーコの髪を嬉々として直しだす蓮。
最初、戸惑っていたキョーコだったが、大人しくされるがままになっている。
慣れた手つきで綺麗に整え、納得した所で蓮がドライヤーのスイッチを切ると、キョーコはふにゃりとした柔らかい笑顔を鏡の中に浮かべていた。

「ん?」
「いえ……贅沢だなぁって思って」
「何が?」
「敦賀さんにブローして貰うなんて」
「そうかな? いつでもリクエスト受け付けるよ。予約もOK」
「ふふ……」

嬉しそうなキョーコに、蓮も口元を緩めながらキョーコの服装をチェックする。

「はい、大丈夫。今日も可愛い」
「ま、また、もう……そんな事ばっかり」

恥ずかしそうにほんのりと赤く頬を染めた後、キョーコは、ドライヤー片手の蓮の方にくるりと振り向いた。

「いつか、どこかで皆に自慢しますからね! 敦賀さんにブローして貰ったって」
「え……いつ……じ、自慢になるかな……」
「なるに決まってるじゃないですか!」

キョーコは溢れんばかりの笑顔でそう言うと、蓮に礼を言い、準備のため、また慌ただしくリビングへと戻って行く。

「それでは行ってきます! あ、朝食、ちゃんと用意してありますからね!」
「うん」
「ちゃんと食べないと駄目なんですからっ」
「うん……わかってる、わかってる」

疑いの眼差しさえも愛おしく見え、蓮の笑顔は降り注ぐ朝日よりもキラキラと輝いている。
キョーコは一瞬その眩しさに目を眩ませていたが、すぐ我に返り、もう一度元気に行ってきますを言って出掛けて行った。
一人残った蓮はキッチンへ向かい、キョーコが用意していたパンとスープ、サラダと向かい合うが、手にしたフォークをフラフラと揺らしているだけでなかなか食事は始まらない。
頭の中は、キョーコが口にした言葉で一杯になっていた。

──いつか、どこかで皆に自慢しますからね!

恐らくは、何の含みもないだろうキョーコの台詞。
しかし、自慢できるような男だとキョーコに思われている事が素直に嬉しかった。
そして、それが出来るようになっている二人の状況が、具体的にどんな状態なのかは考えていないんだろうなとも思い、蓮は揺れる銀のフォークをぼんやり眺めながらその日を想像する。
季節、時間、タイミング、お互いの仕事、一握りの勇気。
そこに到達するまでの色々な道筋を、色んな方向でいくつも考えた。
しかし、あまりに綿密に考えすぎる事はキョーコの女の子らしいふわふわとした夢に似つかわしくない気もした。
朝の短い時間に、つい作り上げてしまった数々のシナリオ。
捨てる事も出来ず、とりあえずは胸の奥底に仕舞い込んだ。
いつもの倍、時間が掛かった朝食を済ませ、蓮は遅れを取り戻すために少々慌ただしく身支度を始める。
ちらりと見たリビングの大きなテレビ画面には、名前だけは知っていたとある男性俳優と立花有香の結婚を報じる朝のワイドショーが流れていた。



コメント

  1. Chisa | URL | -

    勝気で可愛いキョコさん、
    大好きです( •ॢ◡-ॢ)-♡
    ローリー 一味、やりましたね!
    ちょい甘➕若干、桃もあって
    面白かったです♪
    是非また、
    この蓮キョでお願いします!

  2. Kanamomo | URL | -

    コメントありがとうございます!

    コメントありがとうございます♪
    キョーコさん、可愛いと言って頂けて嬉しいです!
    ローリーも頑張りましたw
    いろいろ詰め込んで長くなったお話ですが、面白かったと言って頂けるとやったー!と喜びます(^^v
    更新遅めではありますが、この蓮キョで頑張っていきたいと思います~!
    ありがとうございました!

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