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03 隠されたシナリオ ニ日目─2

2013年11月29日 17:51

短く切ったので2話まとめてUPです。

03 隠されたシナリオ ニ日目─2


蓮はソファに深く腰掛けると、その長い脚をゆっくりと組んだ。
目を瞑り、腕組みをして、深く溜息をつく。
とりあえずは冷静さを取り戻そうと努め、今起きた出来事を頭の中で整理しようとした。
人が変わったかのような様子を見せた有香。
最後に呼んだ名前は自分の役柄名。
色々と引っ掛かる点はあったが、今のは有香の分かり辛い冗談ではないかという考えに至った。
こういう冗談を好む女性には見えなかったが、蓮はそれほど深く彼女を知っているわけではない。
今日、初めて見た一面もあったわけだし、本当はそういうタイプなのかもしれないなと蓮は考えた。
次がなければいいが、もし有った時、自らさりげなく回避するようにするか、それとも控えてもらうように明確に告げるべきか。
迷っている蓮の頭の片隅にチラチラとキョーコの顔が思い浮かぶ。
その時、静まり返っていた室内に訪問者を知らせるチャイムが鳴り響いた。

「……っ」

蓮は思わずソファから飛び上がりそうな位に驚いた。
心臓は早鐘を打ち、身体が強張ったが、すぐに気を取り直し、再び冷静さを取り戻す努力をした。
誰が来たのか、すぐに予想はつき、わざとゆっくりとした動作で立ち上がり、歩き出す。
恐る恐る開けた扉の向こうには、思った通り、いつものマネージャーの姿があった。

「ちょっといいか? 色々と細かい事決まったからさ」
「あぁ、お疲れ様です……どうぞ」

今一つ落ち着いていない状態の自分を気取られないようにしながら、蓮は社を部屋に入れる。
さっさとソファに座り込んだ社に、何か飲み物をと聞こうとした時、蓮は社の手に見慣れない物があるのに気が付いた。

「あれ……珍しいですね、ビールですか?」
「ん? あぁ、まあね。一本位いいかなと思って」

そう言いながら、社は音を立てて缶ビールの封を開ける。
蓮は真面目な社が仕事の話をするために来たのにアルコール片手である事に若干違和感を感じた。
しかし、確かに缶ビールの一本位問題ないなとも思い、大人しく社の前に座る。

「……昨日のラブシーンな、最終日にもう一度撮り直す事になったから」
「あ……はい」
「なんか……今度はいろんな制約なしって事で大胆にいくそうだよ。お前も頑張ってくれ」
「そ、そうですか……わかりました」
「だから明日、明後日は慌しくなりそうだぞ……大丈夫だと言ってたけどちょっと心配だな。こっちのスケジュールは動かせないからなぁ」

社はいつもの手帳をパラパラと捲りながら、何か考え込んでいる。

「大丈夫……なんじゃないでしょうか。立花さんも……調子を取り戻し……てるみたいですし……」
「…………」

心配する社を安心させようとしたものの、大丈夫だと思う根拠を問われたら上手く答えられない。
そう思った蓮の言葉はどことなく歯切れが悪くなってしまった。
何か突っ込まれるかとつい身構えてしまった蓮だったが、社は無反応で、手帳から目を離さない。

「社さん?」

やはりどこか様子がおかしい。
そう思った蓮が呼びかけてみると、社は徐ろに手帳を置き、顔を上げて蓮の顔を見据えた。

「あのな、蓮……実はな」

真剣な顔で社はそう切り出したが、突然、半分口を開いたままの状態で石のように固まってしまった。

「な、なんです?」
「…………」
「社さん?」
「……お、お前……あっ!」
「えっ?」
「お前、もしかして立花さんと会ったな? 部屋に入れたのか!?」
「えっ、なっ……な、なぜ、それを」
「口! 口に赤いのついてるぞ! 何やってんだ、お前!」
「!」

社の言葉に、蓮は全身から血の気がさっと引いていくのを感じた。
ソファを吹き飛ばしかねない勢いで立ち上がり、洗面所へと駆け込む。
自分の顔を鏡に映し、口の端に有香が付けていた口紅の色を見つけると、全開にした蛇口から流れる冷水で何度も顔を繰り返し洗った。
文字通り頭を冷やすために髪までずぶ濡れになった蓮は、頭からタオルを被り、どこか覚束無い足取りで室内に戻る。
蓮が再びソファに座るまでを黙って見ていた社は、頃合を見計らってから咳払いを一つし、俯いている蓮に淡々とした調子で問いかけた。

「俺は……どうすればいい? 見なかった事にすればいいのか?」

社の言葉に、蓮は少し驚き、目を丸くする。

「い、いつもはうるさい位に突っ込むくせにっ……どうして今回はそんな事を言うんです!」

顔を上げ、逆ギレのような状態で怒り、そう言う蓮を見て、どこか硬かった社の表情がふっと緩んだ。

「んー……じゃあ、状況を詳細に説明する気は……ある?」
「あります。嫌っていうほどあります……わかってもらうまでは朝までだって付き合ってもらいますよ」
「いや、お前……俺はキョーコちゃんじゃないんだからそんなに気合入れなくても」
「彼女だったら……明日から俺は仕事になりませんよ」
「えー、それは困るなぁ……困るけど見てみたい」
「…………」

いつものように自分をからかって遊びだした社を見て、蓮は渋い顔をする。
しかし、いつも通りになったその様子にどこかホッとしていた。



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