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変則的三角関係─1

2010年02月24日 11:28

やっぱりどうしてもやりたかったバカップル+お弁当といえば、みたいな。
第一話だけ短編でやりましたが続けて見ました。結果かなり長く(汗
じわじわUp。

1.乱入者



自分の行く方向に立つ男の姿を見て、キョーコは軽く溜息をついた。
それはいやと言うほど知っている…幼馴染の男の姿。

同じ業界にいるのだから、こうして偶に会ってしまうのは仕方のない事かもしれない。
しかし、いつもタイミングが悪い。
あの日もそうだった。
そして今日も同じ局内に蓮がいる。
久しぶりに仕事で同じ時間、同じTV局内にいた。

今日、キョーコはBOX"R"の収録があった。
今回の収録はかなり早い時間からのスタートで、いつものお弁当はお休みになるところだったのだが、この日、蓮も同じ局で仕事があり、昼過ぎ位に空き時間ができると聞いた。

───うまくいけばお昼を一緒に過ごせるかもしれない。

キョーコの方の収録の終わり時間によっては会えるかどうか微妙ではあったが、特に問題も起きずに予定通りに終了。
蓮の方の様子を電話で聞いてみたところ、向こうも予定通りでこれから少しの空き時間。
控え室の場所を聞き、今から行きますからっ、と伝え、少しウキウキしながら蓮の元へ向かっていたところだった。

違う道、あったかな、と考えてみるがキョーコには思い当たらない。
しかも、既に尚はキョーコの姿を捉えているようで、じっとこちらを見ている。
ここで逃げるのはなんだか悔しい、と思ってしまうキョーコ。

アイツに負けることなく且つスマートにあしらって敦賀さんの存在を悟られる事無く素早く通り過ぎる方法は……!

そんな複雑な事など出来そうもないキョーコではあったが、それでも懸命に案を練る。
尚のいる場所に向かってゆっくりと足を進めながら必死に名案を思いつこうとするが、そんな努力も空しく、なにも思いつかないまま、尚との距離は半径5メートルを切っていた。
尚は些か挑発的な目でキョーコを見ている。
薄ら笑いさえ浮かべながら。
キョーコの中でたちまち目を覚ます本来の負けず嫌いな自分。
負けるもんですかっとは思うものの、ここで長い時間尚と小競り合いをして蓮と一緒に居られる貴重な時間を減らしたくはない、とも思う。
もう既に尚の目前まで来てしまったキョーコはどうしたらいいかわからず真っ白になり───其処へまだキョーコの近くを漂っていた「ナツ」魂が降りてきた。

「こんにちは、不破さん」
「あ?」
瞬時に雰囲気を変え、聞きなれない呼び方で自分に声を掛けてきたキョーコに尚は戸惑った。
「番組の収録ですか?お疲れ様です」
少し小首をかしげて斜に構え、挑戦的に尚を見るキョーコの目にはいつも尚と対峙する時にはない余裕の色さえ浮かんでいた。
キョーコにちょっかいを掛ける気満々だった尚だったが、そんなキョーコの様子に驚き、何も言えなくなった。
言葉を無くした尚に、キョーコは怠惰な感じで「じゃ失礼します」とだけ言い軽く会釈をすると、何事も無かったように真っ直ぐ尚の前を通り過ぎた。

尚から離れる事、数メートル。
「ナツ」が抜けたキョーコはなんのトラブルもなく尚の前を通過できた自分を喝采した。
「ナツ」に驚いたらしい尚の様子は小気味いいほどで(やったわ!さすがはナッちゃんね!)などと心の中でガッツポーズ。
二人分のお弁当が入ったバッグを片手に、ウキウキとスキップしながら蓮の控え室に向かうキョーコはご機嫌で、まさか尚が自分の後を追って来ているなど思いもしなかった。


蓮のいる控え室の前でそっと辺りを見回し、人気がないのを確認するとキョーコはそっとドアをノックした。
返事を待っていたのだが、その前にドアが開き、キョーコはあっという間に蓮の腕の中に引きずり込まれていた。
「つっ、敦賀さん!か、か、確認して下さいよっ」
少し驚いたキョーコがそんな蓮を軽く非難する。
「大丈夫、キョーコの気配は分かるから」
冗談とも本気ともつかない、そんな蓮の言葉に少し引き攣りながらも、キョーコは久しぶりの蓮の胸の感触に浸ってしまう。
ここのところ二人とも忙しくて、いつもの朝の逢瀬以外はほとんど会えていなかった。
ほんのわずかな間でもこうして二人きりの時間が持てるのが嬉しくて、しばらくぎゅっと抱き合っていたが、キョーコは「お昼にしましょう?」とバッグからお弁当を取り出そうとする。
「んー…そうだね」
名残惜しそうに、なかなかキョーコから離れない蓮だったが
「敦賀さんっ、今日朝食べてませんね?駄目ですよ、少しでもいいから何か食べてくださいっ」
と、キョーコに軽く叱られ、困ったように笑いながら大人しく控え室にあるソファに座った。
キョーコもちょこんとその隣に座り、テーブルに二人分のお弁当を広げる。
「じゃいただきます」
そう言って、お弁当に箸を伸ばそうとしたキョーコだったが、蓮が箸も持たずにただじっと自分を見つめているのに気づいた。
「敦賀さん…?食べないんですか?」
すると、蓮はにっこりと笑って
「ね、キョーコ、アレやってアレ」
そう言って口をパクパクさせた。
「なっ」
たちまち顔を真っ赤に染めたキョーコは二人しかいない控え室なのに、つい周りをキョロキョロと見回してしまった。
「誰もいないよ?社さんも時間ギリギリまで来ないと思うし」
「だっ、でっ、でもですね、こんなところでっ」
「いいじゃないか。お弁当にキョーコが付いてくるなんて滅多にないんだよ?」
「な、なんですかそれっ。…と、とにかくこんな所じゃ駄目ですっ」
「エー」
その後も、せっかく二人一緒なのに、キョーコが冷たい、こんな機会もうないかしれないよ?などと延々と駄々を捏ねる蓮にやがてキョーコは根負けする。
「も、もう我侭なんだから……」
そう言って、キョーコは徐に卵焼きを一切れ箸で摘むと恥ずかしそうにそっと蓮の方に向ける。
「…あーん」
嬉しそうに緩みきった顔で蓮がそれを口にしようとした時──
「なにやってやがる!てめーら!」
前触れもなく、控え室のドアが開かれ、尚が中に飛び込んできた。


「んぎゃ!!バ、バカショーなんでここに!」
キョーコは突然の尚の登場と、恥ずかしいところを見られた、というショックで混乱し、そのままの体勢で固まってしまった。
尚は尚で、いつの日か己が妄想したシーンが現実に起こっている事に激昂していた。
そんな中、一人冷静な蓮は、キョーコが差し出したままの卵焼きをパクリと口にするとゆっくりと咀嚼し「うん、美味しいよ?」とキョーコにとびきり眩しい笑顔を向ける。
「そ、そうですか?よかったです…」
キョーコがうっかりその笑顔にあてられて頬を赤く染めていると、尚が声を荒げて叫んだ。
「オイ!キョーコ!なにやってんだお前!」
「えっ、あ、あの」
我に返ったキョーコは動揺し、あらぬ方向に目を泳がせてオロオロしていたが、蓮は冷静なまま
「ノックもしないで部屋に入ってくるなんて失礼だね」
と、つい今しがたキョーコに向けていた笑顔とは雲泥の差のある凶悪な顔で尚を睨み付けた。
「はっ……そりゃ失礼しました。でもいくら面倒みてる事務所の後輩だからって弁当作らせるだけじゃなく、そんな事までさせてる男に言われたくねーな」
蓮に負けずとも劣らない凶悪な顔つきで睨み返す尚。
一発触発な空気に焦ったキョーコは何か言わなくてはと思うのだが、何をどう、どんな順番でどんな風に言ったらいいか見当も付かず思考回路がオーバーヒートしてしまっていた。
今にも頭から煙が出そうなキョーコを無視して、尚は蓮に向かって暴言を吐く。
「アンタ、この間、別の女と噂になってたよな?その他にも週刊誌になんか載ってたし。紳士な振りして結構遊んでんじゃねーの?」
「君はあんな女性週刊誌を読むんだねぇ、意外だな」
「うっせーよ。その上とうとうコイツまでか?…随分と手広いじゃねーか」
「噂はデマだし、週刊誌は……まぁいい。俺が誰を好きかなんて君も知ってるだろう?散々挑発して来た癖に」
「…………芸能界一イイ男がなんでコイツなんだよ」
「……君こそいつまで彼女にこだわる?さすがにいい加減目障りだね」
「目障りなのはテメェの方だ。元々コイツは俺のモンなんだよ」
「いつの頃の話だ?そんな大昔の話をされてもわからないな」
「んだとぉ……貴様…」
話の展開が少し予想と違う…と思ったキョーコだったが、どんどん険悪になっていく雰囲気に、ようやく思考回路が正常に動き出した。
(な、なんかよくわかんないけど…このままじゃ敦賀さんが悪者じゃない……ちゃんと言わなくちゃ…)
「あ、あの……」
蓮と尚が同時にキョーコの方を向いた。
一瞬、今まで感じた事がない位の緊張が走ったキョーコだったが、必死に自分を励ましながら
「あのね…ショー、わ、私は敦賀さんが……好きなの……」
と、素直な自分の気持ちを告白する。
尚の頬がピクリと引き攣った。
「だから……」
「だから、付き合ってるんだ」
蓮がそう続け、キョーコの頬にちゅ、とわざと大きな音を立てて口付けた。
「………!」
少し顔が赤くなったキョーコを忌々しげに見た尚は地の底を這うような声で
「……いーつーかーらーだぁぁぁ!」
とキョーコに顔を近づけ、凄みながら聞いた。
「え、えぇっと……」
その迫力に押され、少し狼狽するキョーコの肩をそっと抱き、尚に少しも近づけたくないとばかりに自分の方に引き寄せる蓮。
その蓮の動作に益々苛立つ尚はその視線を蓮に移して睨み付けるが、蓮は真正面からそれを受け止め
「前に君と会った時の直後からだよ……あぁ譲ってくれたんだったよね?……本当に感謝しているよ……?」
そう答えてどす黒いオーラを漂わせてこれ以上は無いというほどの性悪な笑顔を尚に向けた。
そんな蓮を見て、キョーコは…なんだろうこれ大魔王とも違うわよね…闇の帝王?暗黒の使者?いい形容詞が見つからないわ…などと軽い現実逃避をしていた。
しばらくの間、息詰まる空間で睨み合っていた蓮と尚だったが、尚は急に二人に背を向けると控え室の壁を思い切り蹴り上げた。
大きく鈍い音を立てながら何度も壁を蹴り続ける尚に驚いたキョーコが現実に戻る。
「ちょ…なにやってんのよバカショー!」
「うっせえ!バカでつまんねー女になりやがって!俺に復讐するんじゃなかったのかよ!」
「ふ、復讐はするわよ!するに決まってんでしょ!」
「色ボケしたお前にできるわけねえだろ!」
「なんですって!よく言うわよ!さっきの"私"に何もいえなかった癖に!」
「……っ!」
さっきのキョーコ──「ナツ」に遭遇して、何もできなかった自分を思い出し、尚は言葉に詰まる。
それを見たキョーコは(効いてる!効いてるわ!)と、さっきの自分を再び賞賛し、たとえ多少…は色恋に走る自分であってもバカでつまらない女扱いなんてさせないわよ、と力強く主張してやろうと思ったが、思いがけないところから邪魔が入った。
「キョーコ…さっきもコイツに会ったの?」
「え」
尚に向かってビシっと指されようとしていたキョーコの指は中途半端な位置で止まり、ついでに全身の動きも止まる。
ほんのりと、でも確かに感じる蓮の黒いオーラに少し動揺したキョーコは視線を蓮に移動させ
「あっいえ、あのっ会ったんじゃなくてっ偶然前を通っただけです!」
と、慌てて説明するが、これってほとんど同じ意味よね…と、冷静に自分で自分に突っ込んでしまう。
蓮の小さな嫉妬心に目ざとく気が付いた尚は再び勢いを取り戻し
「はっ、小せえ男だな!デカイのは見かけだけか?こんなつまんねー男にひっかかるお前はやっぱバカでつまんねー女だ!」
と、なにやら得意げに捲くし立てた。
「なっ」
自分の事よりも、蓮をつまらない男呼ばわりされたことにカチンときたキョーコは必死に反論しようとするが、つまらない嫉妬で尚につけ入る隙を与えてしまった事を反省した蓮にそっと制された。
「キョーコ、もういいから…」
「でもっ」
「これ以上、コイツと口を聞いてるとキョーコに良くない影響が出る」
「なっ!なんだとてめえ!」
「いい加減、出て行ってくれないかな。邪魔なんだよ」
「そーよ!邪魔よっ!」
「うるせえ!オメーはもう黙ってろ!」
「キョーコに乱暴な口は聞くな」
「知るか!いいか、俺は絶対認めねえからな!」
「はぁ?!なによそれっ!意味わかんないっ!」
「貴様の許可なんて必要ない」

ドアも閉めずに延々と揉め続ける三人。
その会話を聞きながら、近くに人が居なくて良かった…と少し安堵しつつも、これを収拾するの俺なの…?と、予定時間が来たため戻って来ていた社は頭を抱えていた。



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