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再演─3

2013年02月12日 20:45

ここで一区切り、最終話は14日、バレンタインを兼ねた話となります。

再演─3




正直に何でも答える必要はないなと思いながらも
マネージャーは俺で遊ぼうというよりは、まだ心配だという顔をしていたので
俺は昨夜の彼女の様子とプレゼントの事を素直に話す事にした

「そっか、キョーコちゃんが普通に元気で安心したよ」
「社さんが何かしたんじゃないんですか?」
「いや、別に? 俺が十日に送った分だけをできるだけ内密に詳しく調べたいから別にしておいてくれって事務所に頼んだだけ」
「それだと何か不審物でもあるみたいですが……」
「それ位厳重にしてもらった方がいいかと思って。取り扱いを間違うと近くにいなくてもお前にダメージあるし」
「いや、それは……まぁ、そうなんですけど」
「だろ? 久しぶりにラブミー部への依頼もしたし、うまくいってよかった」
「そこまでしたんですか……」
「思いついた事はできるだけしたいタイプなんだ」
「はぁ」

得意気な顔をしているマネージャーがなんだか面白くなり
思わず口元を綻ばせた俺に気が付いたのか
彼はそれは楽しそうな表情で話題をプレゼントの中身に向けた

「パジャマかぁ。いいねぇ、恋人っぽい」
「そうですか?」
「キョーコちゃんなら、サイズぴったり、お前がいつも通り違和感なく着れる物くれたんだろう?」
「はい」
「ほら、その辺のわかってる感がいいよねぇ」
「はは…」
「他の人だと……そうだなぁ、お前ってなんか常に裸で寝てそうなイメージが」
「いや、そんな……俺はちゃんと着る方で」

裸で眠る夜もあるなと一瞬思ったが
さすがにそこまで正直に言う事はないと口に出すのを思い止まった時
昨夜、頭の中で引っ掛かった何かが
その正体を現さないまでも、明確な形を取ったのが見えたと思った

「恋人っぽい……ですよね……」
「へっ? あぁ、うん」
「人前で渡すのは……少し恥ずかしいような……」
「んん? パジャマが? そんな事はないと……いや……どうだ?」
「なんて言うか……彼女の場合だと」
「あぁ、そうか、キョーコちゃんだと……着るトコを想像しちゃって人前じゃ渡すのも恥ずかしいぃぃ! って感じ?」
「ま、まぁ、そんな風になってもおかしくないかなと……」

彼女の真似をするマネージャーに小言を言いたくはなったが
それよりも優先して考える事があると思い、我慢する
何にも動じる事無く堂々としていたあの時の彼女の様子
それを思い出していたのに、彼の次の台詞で心臓が飛び出しそうになった

「もしかして、羞恥プレイしたかった?」
「なっ! そっ、んな事、俺はっ……」

即座に否定しながらも、頭の中に俺の誕生日が来た直後のあの夜の事がまざまざと蘇る
決して誰にも言えない俺と彼女だけの秘密の夜
変なタイミングで思い出してしまったせいで動揺が激しく、喉が渇いて言葉が出ない
幸い最初に上げた俺の狼狽した声だけで満足したのか、マネージャーはそれ以上突っ込んではこなかった

「あはは、冗談だよ。でも、確かに人目は避けそうだよなぁ」
「です……よね……」

掠れた声を隠すように小さくそう言った俺は
傍にあったペットボトルの水をさりげなく手にして喉を潤す
冷たい水が熱くなった心と身体をゆっくりと冷やしていってくれた

「……なんとなく最初に受け取った物とパジャマが結びつかない感じがあったんですよ」
「えっ……そうなの?」
「こう……持った感じとか、大きさとか。確か紙袋に入ってたんですけど」
「うーん……俺もちゃんと見てないしなぁ」
「パジャマの包装に統一規格があるわけでもないでしょうし、気のせいかなって思ったんですが」
「もしかして……昨日、本当は見つからなかったのかな」
「えっ」
「それで慌てて別のを買いに行ったとか」
「それは……それでまた買い直させたなんて俺はちょっと」
「…………」

ここで俺とマネージャーのいた控え室の扉がノックされ、話が一旦終わった
スタッフに促され、今日も俺は落ち着かない気分のまま仕事に向かう
部屋を出る間際に、マネージャーは電話する用事があったんだと言いながら
何かのサインのように軽く手を挙げ、俺の傍から離れた
それを頼りに、俺はなんとかギリギリのラインで、頭の中を仕事へと切り替える事に成功した



***



『俳優部の若い奴が一緒に居てくれたらしくてよく覚えてたよ』

マネージャーの言葉が頭の中を巡る
マンションの駐車場に止めた車を降り、確認した時刻は午後九時になったばかり
いつもよりは早い時間の帰宅になり、充分に余裕があるのが今日は特にありがたかった

『険しい顔で、これは危険です! とか言って荷物一個持って行ったって。何事だったんですかって言い訳するのちょっと大変だったよ』

ゆっくりと上昇していくエレベーターの中で
彼の設定通りに行動する、爆弾でも抱えたような顔のピンクのツナギの彼女を想像してちょっと可笑しくなった

『お前、慌てていて見逃したな? 小さめの黒い紙袋、アルマンディのロゴが入ってたって言ってた。パジャマは違うんだろ?』

どちらも指摘された通り
彼女の思いがけない行動で、俺はいつも冷静でいられなくなる
誕生日から始まり、今日までずっと、今だって
色んな意味でまったく落ち着く暇がない

『無事見つけたのにわざわざ別のを買い直した理由があるんだろうけど……どうするかはお前次第だな。じゃ、お疲れさん!』

別れ際、どうするかは俺次第などと言いつつも
マネージャーの顔にはなぜか期待が満ちていて、明日色々聞かせろよと書いてあった
思い通りにするのも口惜しいからあえてこの事に触れないという道もあるのだけれど
俺の彼女に対する欲望の深さに比べたら、そんな意地などちっぽけなものだ

彼女が俺のためにもう一つ、何を買ったのか知りたいし
それがどんな物であっても、俺はこの手の中に収めたい
どうして別の物に買い直したのかも知りたいし
あの日、わざわざあの場所に持ってきた理由も
俺が気付けない場所にあるのかもしれないからこの際一緒に確かめたい

何らかの理由で俺に知られたくないのだろうなと思ったし
それを無理矢理聞き出すのはスマートじゃないなと自分でもよくわかっているが
なんとしても教えてもらうつもりで、その方法をあれこれと考える
そして、エレベーターの扉が開いた時
俺の頭の中に浮かんできたのは
あの夜の悩ましい彼女の姿だった



囁き合うようにした、言葉の応酬
濡れた唇は拒絶の言葉しか吐き出さないのに
震える白い脚は俺の指示通りにゆっくりと開かれていく
たどたどしく動く彼女の頼りなさげな手指が
その白く柔らかな胸の先を揺らしながら紅く染めていき
彼女は泣きそうな顔をしているのに
小さく甘い吐息のような嬌声を漏らした

俺は昂ぶった気持ちで声が上擦らないよう気をつけながら
彼女の空いているもう片方の手の行く先を告げる
彼女は小さく息を飲み、弱々しくも必死で何度も首を横に振った
しかし、俺も何度も同じ言葉を繰り返し、嫌がる声に耳を貸さない
やがて、彼女は困惑した表情で
恐る恐る俺の言う通りの場所へと自分の手を置いた
こわばってまともに動かない細い指先を
言葉だけで俺の望む場所、触らせたい部分へと誘う
繰り返す内、彼女は俺の要求通りに
迷いなく素直に動くようになった
不規則に響き始めた湿った音
乱れて荒くなっていく彼女の息遣い
艶かしく動いては濡れていく指先
それら全てが俺の我慢を限界まで近づけていく

ふいに、胸を押さえていた方の彼女の手がぱたりと下り
ずっと下を向いていた彼女の視線が俺に向けて上げられた
汗ばんでほんのり紅く染まった頬と何か言いたげに少しだけ開いた唇
潤んだ瞳にはむき出しになった欲望が色濃く滲んでいる
下りた手はゆっくりと内腿をなぞるようにして滑っていった後
俺に見せ付けるようにしてその脚をもっと大胆に大きく開かせた
そして、俺が言うよりも前に
濡れていた指は彼女の奥へと続く入口へと移動する
不安定な動きで、その指先が飲みこまれていった時
眩暈にも似た興奮が一瞬で身体中を駆け巡った

どの動作にも彼女らしい控え目さと不慣れな雰囲気が漂っていたが
それが返ってその光景の淫猥さを引き立てる
なんとか保っていた冷静な俺はそこで終わりを告げ
吸い寄せられるように彼女に近づいた
震える手を誤魔化すために、少し乱暴にその身体を押し倒し
彼女に有無を言わせないまま、一気に中へと入り込む
今までずっと混じり合っていたと思える程に同じだった俺と彼女の中の熱が
抑えられなくなった俺の衝動をじわじわと煽っていた
彼女の悲鳴混じりの嬌声に合わせるように
俺も何か言っていた気がするが、自分ではもうよく覚えていない
どこに触れても悉く反応しては乱れていく彼女の身体を
取り憑かれたように貪り続け
身体中から流れて滴り落ちていく汗が
彼女の火照った肌の上に落ちる瞬間にさえ
目が眩む程の快感を覚えた



「あ……」

ふと気が付くと俺は玄関の扉を目の前にして一人立ち竦んでいる
どれ位の間、そうしていたのか
回想で一時自分を見失っていた事に気付き、誰もいるはずのないフロアを慌てて見回してしまう
咳払い一つで仕切り直してはみたが
身体の奥についてしまった火は消えない
あの夜の再演を熱望し始める自分が
なかなか口を割らない、頑なな彼女を期待してしまっている

俺に"三つ"もプレゼントを用意してくれた君が
なぜ俺に弱みを握られた状態になるのだろうねと思いながら
この悪巧みが悟られてしまわないように
口元に浮かんでいた笑みを急いで消した後で
俺と彼女の部屋の扉をゆっくり開いた



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