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2012Xmas─3

2012年12月25日 00:40

最終話です。
お付き合い下さった方、ありがとうございました♪

2012Xmas─3

テーブルの上の小さなツリーの横で
キャンドルのサンタは本来の役目を果たしている
彼女がつけた小さな灯りの中には
冷蔵庫から出てきた、俺専用だという小さなケーキが置かれていた

「こんな時間ですけど……今夜だけ」
「うん。いいね」

俺がそう言うと、彼女は嬉しそうに笑った
甘さ控えめの生クリームをつつきながら
今日の社長の家でのパーティの様子を話すと
彼女はとても楽しそうに聞いてくれる

「すごかったんですねぇ」
「すごすぎてマリアちゃんはちょっと引いてた」
「ふふふ……モー子さんはどうしていましたか?」
「琴南さんはずっと難しい顔をしていたね」
「あぁ~、もう、モー子さんたら」

仕事が無事終わり、ほっとしているのか
彼女がいつもより少しはしゃいでいるのがわかる
普段の夜よりもずっと饒舌で
終始にこにこしていて、とても機嫌がいい
それからずっと、今度は今日の彼女の仕事の裏話などを聞いて
これ以上サンタが溶けてしまうと可哀相だと言う彼女の意向で火が消され
皿の上からケーキがなくなった頃
ソファに座っていた彼女は気持ちよさそうにウトウトとし始めた

「キョーコ……ベッドにいったほうがいい」
「はい……今、片付け……ますね……」
「いや、いいから……ほら」
「んー…」

半分眠っている彼女をベッドに連れて行こうとして
彼女の足に貼られた湿布が目に入る
朝になったらすぐにでも医者に行った方がいいという俺と
大げさだと言い張る彼女
散々揉めた結果、一晩経っても痛みがまったく引かなかったら医者に行くという事になった
彼女が誤魔化す素振りを見せたら強引に俺が連れて行こうと密かに決意し
二十五日をオフにする努力をしてくれたマネージャーに今更ながら感謝しつつ
彼女の膝裏と背中にそっと手を回し、恐る恐る抱き上げる
ついさっきもずっと彼女を抱いて歩いていたのに
急になぜか強く触れたら壊れるガラス細工のような感じがして
妙に緊張しながら寝室への短い距離を移動する
無事に彼女をベッドに寝かせて、ほっと溜息をついた時
俺はまだ彼女への誕生日プレゼントを渡していない事に気が付いた

「…………」

できるだけ静かにクローゼットの扉を開ける
奥に隠していた、革張りの小さな箱
その中には今まで贈った事のない、左手の薬指にしてもらうのを想定した指輪があった
恋人への贈り物としてはごく普通なものなのだけれど
ごく普通の恋人達とは少しだけ違う俺と彼女の立ち位置がネックとなって
今まで贈るのを躊躇っていた

いずれ深い意味を込めて贈る日が来るまで待った方がいいんじゃないかと
昨日までは少し迷っていたりもしたけれど
今日のように誰かに誘われたりする事がこれからもあるのだろうと思うとやはり心配で
今、改めて指輪を渡そうと決心する

指輪をしていれば万全というわけでもないし
そもそも、普段ずっとつけてはいられないだろうとも思う
それでも忙しい毎日の中で
俺の事を思い出すきっかけが増えるはいいことだよな、なんて
俺の、彼女に関する事への欲深さは自分でも呆れるほどだ

リビングに戻り、テーブルの上を片付けた後
溶けかけたサンタのキャンドルの隣に指輪の箱を置いた
左手でも右手でも、指には嵌めずにただ持ち歩くだけでも、どこかに仕舞い込まれてしまっても構わない
これが彼女の物になりさえすればいいんだと思いながら、俺はリビングを後にする

ベッドの中の彼女の穏やかな寝顔を眺めながら
彼女と同じ夢の中へ行きたかったのに
俺が落ちていった世界には
困ったような顔で指輪を丁寧に返して来る彼女ばかりが繰り返し繰り返し現れて
その度にまともにダメージを受けてしまう俺は何度も目を覚ましてしまう羽目になり
結局、朝までまともに眠れなかった





「つーるが……さん?」
「ん……」

彼女の呼びかけに気付き、目を開けると
ベッドの横にしゃがみ込んで、俺を心配そうに見つめている彼女の顔が見えた
寝室の中は既にすっかり明るくなっていて
もうかなり日が高いのがわかった

「大丈夫ですか……?」
「えっ?」
「なかなか起きてこないので、疲れてるのかなって……もしかして具合悪かったりしません?」
「いや……なんともない……そうか、少し寝すぎたのかな」
「そんなに遅い時間でもないんですけど……なんだか辛そうな顔で寝ていたので……」
「…………」

その原因はすぐに思い当たった
しかし、それをそのまま彼女に言うわけにもいかない
なんとか適当な理由をでっち上げようとした時
彼女の足の事を思い出した

「足」
「へっ?」
「足の具合はどう?」

急にベッドから起き上がってそう言った俺に
彼女は一瞬びっくりしたような顔をしたが
すぐにニヤリと不敵に笑り、勢いよく立ち上がった

「この通り! すっかり痛みも引きました!」

命を賭けた大勝負に勝ったとでも言わんばかりに
オーバーアクションで彼女は自分の足元を手の平で指し示す
見ただけじゃわからないからと突っ込みたくなったが
それよりも前に、ぴしっと真っ直ぐ伸ばされていたその手の平に
光っているものがあるのを目聡く見つけた俺は
それが何か確認するためにその手をそっと掴んで引き寄せる

「ああぁっ」

慌てている彼女の悲鳴のような声を聞きながら
左手の薬指に当たり前のように収まっている指輪を見て
嬉しさと愛おしさが胸に溢れていく
指先にそっと唇を落としてから
ふと彼女の方へ視線を向けてみると
つい今の勢いはどこへ行ってしまったのか
真っ赤な顔で、もじもじと恥ずかしそうに下を向いている姿が目に入った

「あ……りがとう……ございます……嬉しい……です……」

途切れ途切れの小さな声で聞こえて来た彼女のその言葉で
寝不足も、不吉な夢ばかり見ていた小心な俺も全て吹き飛んでいく

「こちらこそ……ありがとう」
「え……」

自然と口から出てしまった俺のお礼の言葉を
顔を上げた彼女は不思議そうに聞いていたが
俺が思い切り優しく微笑みかけると
赤い顔のまま、急に眉を顰めて泣きだしそうな表情になった

「キョ、キョーコ?」
「もうっ……寝起きでパジャマでも王子様なんてっ……ずるいです!」
「へっ」

よくわからない批判を受けて戸惑う俺に、彼女はくるりと背を向ける
少し困ったが、"王子様"なら悪いという事はないのだろうと思い
起き抜けから頭をフル回転させ、彼女を振り向かせる言葉を考える

「……お腹空いたね」
「!」
「久しぶりにゆっくり一緒に朝食を」
「作りますっ! というかもうほとんど準備できて……あ、もうちょっと待っていて下さいね!」

そう言って彼女はキッチンを目指してパタパタと駆けて行く
その様子を見て、足は本当に大丈夫そうだと確認できた俺は
どこか晴れ晴れとした気持ちで彼女の後を追う事にした

途中、通りがかったリビングのテーブルの上には
中身は空になっているはずの小箱がそのまま置いてあり
指輪の引渡しを依頼していたキャンドルのサンタは
いつの間にか、サイズぴったりの赤い毛糸の帽子を被っている
どちらかといえば感謝すべきなのだろうけど
訳知り顔なそいつがちょっと憎らしくなってしまった俺は
後で彼女に叱られるかもしれないなと思いながら
帽子を思い切り引っ張って顔まで覆い隠してしまうと
小箱が見えなくなるように、くるりと背を向けさせた



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