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永遠に秘密─Kyoko

2010年02月22日 11:40

キョーコ視点。


「あ、ほら敦賀さんよ」
「ホントだ…んーやっぱカッコいいよね~」

空き時間に頼まれた届け物を持ってきたTV局。
偶然、敦賀さんを見かけた。

わ、わ、どうしよう、声かけたいけどこんな場所じゃ無理かぁ…

周りにはたくさんの人。
皆、敦賀さんに注目している。

「いいよね~…ぜひ狙いたいトコなんだけどライバル多いよね~」
「みーんな狙ってるもん。しかもそう簡単には落とせないらしいし」
「前、ちょっと噂あったよねー」
「あれデマらしいよ。今フリーよ、フリー」
「マジで?うーん、仕事が一緒になったりしないかなぁ~」
「バラエティとか、あんまり出ないよねぇ」

私の隣でずっと敦賀さんの話をしている二人は
よくTVで見かける綺麗なタレントさん。
モデル出身の彼女は手足が長くってスタイルもよくて…
もう一人の彼女は…む、胸がっ…きょ、巨乳…っ

かろうじてピンクのつなぎじゃない私だったけど
だからといってとても…かなうわけもなく
少し落ち込んで、二人の側を離れた。
こんな事しょっちゅうなんだから、いちいちへこんでちゃダメよねと思い
「いつかは釣り合うように」と、いつものフレーズを心の中で繰り返す。

いつか釣り合うような女になったら、堂々と……

ふと、足が止まる。
敦賀さんはもう行ってしまった。
さっきの二人も、もう移動していない。

少し人の減ったその場所で、自分の中に急に沸いた感情に戸惑う。
いつか釣り合うようになったら、堂々と付き合っていますって
本当に私は言いたいの……?

言いたいわよねっ、そう思って頑張ってるんだからと必死で思い直すけど
反対にどんどん強くなるその感情。
もし、彼の恋人が…私だって知れたら
あの程度の女なら…勝てるんじゃないかって人がたくさんでてきて
返って…ライバルが増えたり…しない?

いやいや、釣り合うようになってれば大丈夫でしょ?
でも…
でも…本当に釣り合うような女になれるの……?
人間、限界ってものがあるわよね。
もしかしたらどんなに頑張ってもなれないんじゃないの…?

一度沸いた不安はどんどん大きくなって
一気にマイナス思考の自分が騒ぎ出す。
毎日繰り返される彼の愛の言葉。
それだけが私をかろうじて支えている。
私だって同じくらいそんな言葉を返したいけど
どうしても照れてしまって、うまく表せない。
その分、胸の中に積もり、ふくれあがって
その重さの分だけ、不安も肥大する。

例え、釣り合うことができなくったって
もう彼の手を話す事なんてできない。
本当はどこかにしまいこんで独り占めしたい。
彼を…誰にも見られたくない。

そんな事を考える自分が嫌になって
それ以上考えるのはやめた。


その日の深夜にふと、目を覚ましてしまった。
今日は彼のマンションの寝室で眠っていた。
隣には穏やかに眠るあの人。
静かな寝息を立てて眠るその顔を見ていたら
お伽話をひとつ思い出した。
シーツを少し引っ張って、彼の顔の周りに寄せてくしゃくしゃにする。
足りない分を補うように脱ぎ捨てられていた彼のシャツを持ってきて
やっぱり皺くちゃにして枕ごと彼の顔を囲むように置いてみる。
自分のシャツやバスローブまで使って、どんどん囲んでいたら
とうとう彼が目を覚ましてしまった。

「あ…ごめんなさい…起こしちゃいました?」
「んー…いや、いいけど…なんだい、これ?」
少しぼんやりしながら顔の周りを囲むように置かれたそれを見て
ちょっと不思議そうな顔をする。
「茨…のつもりでちょっと囲ってみました」
「茨?」
「…眠れる森の美女…かなって」
そう言って少しいたずらっぽく笑うと
敦賀さんもくすくすと笑う。
「俺がお姫様かい?…じゃあキョーコが迎えに来た王子様だ」
「ふふ……」
「目覚めのキスは?」
「ん…」

キスはやっぱり"王子様"の方からかしらなんて思っているうちに
"お姫様"から近づいてきた。

敦賀さんに口付けられながら
頭の奥底の方で密やかに思う。

違う。
違うの。
もし「茨姫」の世界に私が行けたなら
貴方がその"お姫様"ならば
私がなるのは"王子様"じゃなく、12人目の魔法使い。
姫の呪いを"死なずに百年の間眠る"なんてものに変えないで
"永遠に眠る"って言っちゃうの。
そして、迎えに来た王子様も誰も彼もあなたには触らせない。

そうして眠る貴方の傍で命ある限り一緒に過ごす。
やがて私は死ぬでしょう。
そしてその後は貴方を囲む茨となって
また一緒に、今度は永遠の時を過ごすの。

恐ろしいまでの独占欲。
こんな私を貴方には知られたくない。
だから絶対に
───永遠に秘密。




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