2011Xmas─24日午後4時

2011年12月24日 16:00

今日と明日とに分けて、クリスマスSSをUP。
短く場面場面で区切っちゃったので全3話ですが、短めです。
明日の夜9時と11時に残りUP予定です。

電車を待つホームの上で、キョーコのバッグの中の携帯が震えた。
キョーコは同じように電車を待っていた人達の列から一旦離れ、携帯を急いで取り出した。

「もしもし」
『もしもし、キョーコ? もうマリアちゃんは出発した?』
「はい。元気に出掛けて行きました」

十二月二十四日、マリアの誕生日。
今年のこの日、マリアは一大決心をして飛行機に乗り、自分から父親へ会いに行く事を決めた。
キョーコはそんなマリアを空港まで見送りに行っていた。

『そうか、よかった……キョーコは今帰り?』
「はい、途中の駅です。椹さんに呼ばれているのでこれから事務所に寄って、その後帰ります」
『そう……寒くない?』

朝からもう何度目かわからなくなった蓮からの電話。
どれもどこか沈んでいる印象があった。
今の声もどこか元気がない。

「……大丈夫ですよ。そちらこそ寒いんじゃありませんか?」
『ん、大丈夫』
「風邪引かないで下さいね」
『キョーコも気をつけて……あ、じゃあまた後で』
「はい、頑張って下さいね」

短い会話を終えた時、電車が大きな音と共にホームへと入ってきた。
キョーコは小走りで電車を待っていた列の最後尾に戻り、車内へと乗り込む。

(電話して、なんて……言わない方がよかったかな……)

動き出した電車のなかで、電話から聞こえた蓮の覇気のない声を思い出す。
もしかして朝からずっと沈みがちなのだろうかと思い、キョーコは蓮と、そのマネージャーの事を心配した。




「ごめんよ、キョーコちゃん……こんなはずじゃなかったのに」

十二月の初めのある日、この世の終わりのような顔で社はキョーコにそう謝った。

「クリスマス前後の仕事は出来る限り仕事詰めない予定だったのに、まさか東京にいない事になるなんて……」
「あ、あの社さん」
「何度か融通きいてもらったりした相手で……どうしても断れなかったんだ……」
「仕事優先ですよ。そんなに気を使わないで下さい」

社はキョーコが驚くほどに落胆し、蓮にいたってはしばらくの間、暇さえあれば深刻な顔で考え込む様子を見せていた。
その度にキョーコは、多少日にちがずれた事など大した事ではない、気にしないで下さい、と蓮に繰り返した。
自分を懸命に気遣う二人の様子を思い出し、キョーコは返って申し訳ない気持ちになっていた。

マリアが父の元へと出かけたため、今年、パーティは催されない事になった。
奏江はどういった経緯があったのか、なぜか脅されて兄や姉そしてあの弟妹甥姪達のいる実家へ、安いけれど大きい雑多なケーキとやらを持って突撃しているはず。
十二月に入って少し腰を痛めてしまったらしいだるまやの女将。
大将は店を年末まで休みにし、治療を兼ねた温泉旅行に夫婦揃って出かけていった。
今朝仕事で出掛けた蓮が家に帰ってくるのは二十六日の夜。
仕事の予定も入っていなかったキョーコはクリスマスでもある誕生日を一人で過ごす事になってしまった。

(今までがちょっと幸せすぎたのよねぇ……この辺で少し気を引き締めなさいってことよ、きっと)

それでもやはり寂しくないと言えば嘘になる。
しかし、既に奏江やだるまや夫妻から誕生日のプレゼントは受け取っていたし、自分を盛んに気に掛けてくれる人が何人もいる。
これ以上を望むのは少し贅沢だと思った。

(今日、明日と静かに過ごそう……敦賀さん、あさってには帰って来るんだから何か準備してもいいかな……)

電車の中には楽しげに会話する数人のグループや仲睦まじげなカップルの姿がいつもよりも多く目に付いた。
つい、羨ましげな目で見てしまっている自分に気づき、キョーコは頬を軽くピタピタと叩きながら電車の窓から見える街の夕暮れ空を見つめていた。



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