お仕事の後で─11の6

2011年11月27日 00:18

最後は短いので同時にUP。

これが最終話になります。
お付き合いくださった方々、どうもありがとうございました!


お仕事の後で─11の6

様々な夜 6/6


予め蓮から帰りは遅くなるから気にせず寝ているように言われていた。
さっき届いた帰宅を知らせるメールも返事を求めてはいない様子だった。
それでも今夜は蓮が帰宅するまで起きているつもりのキョーコは、リビングで難しい顔をして仁王立ちをしている。
見上げた先にあるのは、出入り口のど真ん中にぶら下げた、サッカーボール大のピンク色をした丸い玉。

(勢いで作っちゃったけど……色々と間違った気がするわ……)

帰り道、仕事の無事終了を祝って何かしたいとキョーコは考えていた。
花束は貰っていたのを見たし、それ以外で祝える何かを、と、短い時間の中で、なんとかキョーコが思いついたもの。
それがこの"くす玉"だった。

(きっと、打ち上げの雰囲気にやられちゃって浮かれてたんだ、私……)

作っている最中に、おかしい事に気づかなかった自分に呆れながら、キョーコはピンク色の玉を見つめた。
安く手に入れた色紙や紐で作られた手作り感満載なそれは、この部屋のインテリアとは水と油状態で、色んな意味で激しく浮いている。
ぷらんとぶら下がった紐を蓮が引っ張る図を想像してキョーコは妙にへこんでしまった。
自分の作り出すものと蓮とのミスマッチさを改めて思い知り、やはりこれはやめようと考え、設置する時に台代わりに使った椅子をもう一度キッチンへと取りに行く。
キッチンに入った時、キョーコが見ていた範囲でも何も食べていなかった蓮を思い出した。
林檎でも剥こうかなと考え、冷蔵庫を開けたが、とりあえずあのくす玉を撤去する方が先だと思い、扉を閉める。
その時、玄関の方から物音がした。

「あっ!」

思っていたよりも早い蓮の帰宅に焦り、キョーコは大慌てでリビングへと走る。
しかし、時既に遅く、くす玉の前にはポカンとして立っている蓮の姿があった。

「お! おかえりなさい……あ、あのっ」

今からでも撤去しようとキョーコは思ったが、台代わりの椅子は持ってきていない。
オロオロとするキョーコをそのままに、蓮は不思議そうな顔をしながら、ゆっくりとぶら下がっている紐に手を伸ばした。

「ああぁっ」

止めようとしたキョーコの目の前で、蓮は紐を引っ張った。
玉は二つに割れ、中から出てきた色とりどりの小さな紙片がひらひらと舞い落ちる。
"お疲れ様でした"と書かれた細長く白い紙が少し丸まったまま、遠慮がちに、そして、間の抜けたタイミングで降りた。

「うっ……」

想像以上に奇妙な構図に、キョーコは顔を真っ赤にして頭を抱えてしまった。
床に散らばった紙吹雪。
その中で、蓮はうずくまり、肩を震わせて笑っていた。




「……お、お祝いしたかったって、キョーコだって出演者じゃないか」

蓮はそう言いながら、テーブルの上にあるキョーコが切り分けた林檎に手を伸ばした。
いまだに笑いが止まらない様子で、その手が少し震える。

「そうなんですけどっ……私の収録は結構前に終わってしまってましたし、敦賀さんは主演ですからっ」

そんな蓮の様子に、すっかりむくれてしまったキョーコが語気を荒くしながら言った。

「面白かった……TVでは見た事あるんだけれど、実物にお目にかかったことはなかったし、紐も引いた事なかったし……」
「それは……ようございましたっ」
「そ、そんなに怒らないで……」
「怒ってませんっ」

声を殺して笑う蓮の横で、キョーコはしゃりしゃりと音を立てて林檎を目一杯口に頬張る。
テーブル横に拾い集められた紙吹雪と割れたくす玉。
蓮は床の上でくるんと丸まってしまっている"お疲れ様でした"を、大事そうに丁寧に伸ばしていった。

「今日一番嬉しい"お疲れ様"だよ?」

蓮のその言葉に、リスの様に頬を膨らませた状態のキョーコは、一瞬喉を、そして言葉を詰まらせた。

「……んも、知りまふぇんっ」

少しむせた後、膨らんだ頬を染めてプイと横を向いたキョーコに、蓮は蕩けそうな笑顔を向ける。
そして、フォークに刺した林檎を一切れ、上に向けて差し出した。

「はい。お疲れ様でした」

一瞬きょとんとしたキョーコだったが、すぐに同じように林檎を一切れ手にする。

「……お疲れ様でした」

ただ触れるようにしただけの林檎の欠片。
打ち上げでは、一次会も二次会も、周りにはたくさんの人がいてグラスを近づけることもできなかった。
ようやく近くで言えた"お疲れ様"に、キョーコもこの日一番の笑顔になった。




コメント

  1. ひろりん | URL | -

    素敵なお話し

    Kanamomo様

    初めまして、HNひろりんと申します。
    素敵なお話しありがとうございます。
    スキビ二次作家さんのリンク先から、ついこの間お邪魔させていただきまして、順番に拝読させていただいております。
    全作品、原作も“こうなって欲しいな”と思える素晴らしい作品ばかり(申し訳ございませんまだ5分の3くらいまでしか拝読していません(^^ゞ)
    本当は一気に拝読してみたいのですが、なぜかもったいない気がして・・・・少しずつホンワカしています。
    短編の“いたずら”や“カード型爆弾”のキョーコちゃんの素直な感じがまた何とも言えずかわいい!キョーコちゃんを大事にしている蓮さんもかっこいいです。
    この“仕事の後で”はとても気に入った作品です。さすが器用なキョーコちゃんくす玉さえも手作りとは!紐を引く蓮さんの姿、安易に想像できるのはなんででしょう?色とりどりの紙ふぶきの中でぽつんと佇み、そして爆笑。いいです。

    また、キョーコちゃんが泣いた時の蓮さんの対応、素晴らしい!守っている感じが何とも言えないです。


    長々とすみません。
    これからもこんな素敵なふたりのお話し待っています。
    ありがとうございました。

    PS作品を出されてから時間経過がありますが、拝読させていただいたのが、ついこの間でして、言い訳です・・・申し訳ございません

  2. Kanamomo | URL | -

    コメントありがとうございます!

    初めまして! ようこそです!
    コメントありがとうございます。
    素敵だと言って頂けて嬉しいです。
    >原作も“こうなって欲しいな”と思える
    嬉しいお言葉ありがとうございます!
    早く蓮キョがまとまるといいな!と思って書きだしたお話達です。
    そこそこ数も増えましたので一気はなかなか大変だと思いますが、お暇な時にでも、のんびりと読んで頂けたら嬉しいです。
    でも現在は更新が遅いのであっという間に終わってしまうかも(汗 が、頑張りますっ(汗汗
    短編の方も目を通して頂き、ありがとうございました♪
    いたずら、みたいなお話はまた書きたいですね!
    カード型爆弾、の方はスマホ全盛の今だとどんな感じになるかな~と思ったり。
    お仕事の後で、はどれも楽しく書かせて頂いたので気に入って頂けてよかったです!
    最後はお祝いだからくす玉!となりましたwキョーコさんならきっと作れるはず!とw
    素直に紐引っ張っちゃって紙吹雪の中の蓮を想像して笑って頂けたら幸いでございますw
    泣き虫なキョーコちゃんにちゃんと対応してくれる蓮が理想であります。
    お眼鏡にかないましたら良かったです♪
    どのお話も、いつでもコメント大歓迎ですので、またよろしくお願い致します!
    ありがとうございました!

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