お仕事の後で─11の4

2011年11月26日 00:16

お仕事の後で─11の4

様々な夜 4/6
帰り道で見た月が綺麗だったので寝室のカーテンはわざと開けておいた
その事に彼女が気づかぬように
気づいてもどうにもならないようにあらゆる手を尽くす

努力の甲斐あって今俺の目前に広がる光景は
出来過ぎと言っても良いほどに俺が望んでいたものだった

少しだけ乱れた前髪
伏せられた瞳と睫毛の陰影
細い首筋から続く、目を惹いて止まない鎖骨
月明かりの中に浮かび上がるその白い姿態
控えめに揺れる柔らかな膨らみを飾る淡い暖色だけが
色彩の乏しい室内に仄かに色を添えていた

下から見る、その姿に見惚れながら
華奢な腰に手を添え、ゆっくりと上へ滑らせていく
滑らかな手触りを指先で味わっているうちに
秘めている衝動を抑えきれなくなり、その胸を強く鷲掴む
彼女は小さく喘ぎ、身を捩ると
ずっと規則的だったその動きを大きく乱した

「いやらしいね……」

乱れたのは彼女だけではなかったので
それを誤魔化すためにわざと意地悪を言う
彼女は瞼を開き、今にも泣きそうな位困った顔で俺を見た後
頬を染め、拗ねたように横を向いた
それはいつもの恥ずかしがり屋の彼女の表情で
こんな場面でも羞恥を捨て切れていない様子に少々場違いな愛おしさが込み上げる
堪らず、その頬に向けて手を伸ばした時
彼女は再び身体を揺らし始めた

「ん……」

清涼な月明かりの下で
まだ少女の面影さえ残る君が
一糸纏わぬ姿になって俺の上で艶かしく動いている
そんな彼女から与えられるのみの快感は
どこか背徳の香りさえした

普段の様子からは早々誰も想像できないはずの彼女の姿
それを手にしているという事に
思いつく限りの"彼ら"への優越感が湧く
そして普段自分でも持て余す程の独占欲が
体温が上がると共にじわじわと満たされていった

「あっ、あっ」

重く濡れた水音が彼女の短く続く嬌声に紛れて寝室に広がった
彼女の額には汗が滲み、頬の紅潮がより鮮やかになっている
思わず彼女の腰を強く掴み、下から突き上げるように自分の腰を押し当てた

「あっ、やっ……駄目です」

彼女は慌てて手を伸ばし俺を制止しようとする
でも俺が構わず動き続けると
僅かに開いたその唇から小刻みに声を漏らし
揺れる表情には恍惚とした色が浮かんだ
でも急に眉を顰め、口を固く結ぶと
再び手を伸ばし、俺の腕を強く掴んだ

「キョーコ……?」
「だ、駄目ですっば……」
「……なぜ?」

辛うじて冷静に、できる限り優しく理由を聞いた
交わっている部分はもう溶けるように熱くて
じっとしているのにも忍耐が要る

「……だって……今日は……私が……やりますから……」

さっきと同じように
恥ずかしそうに目を逸らしながら彼女はそう呟く
平静さは装っていただけだったので、うまく頭が働かず
彼女の言っている事がすぐには理解できなかった
黙って見つめ続けてしまっている俺を
彼女は叱られた子供のような瞳でチラチラと窺っている
そこで俺はやっと今夜あった出来事を思い出した

俺の車に紛れ込んでいた小さなアクセサリー
それによって生じた俺へのささやかな疑惑は真面目すぎる彼女の負い目になっている

恥ずかしがり屋の彼女がいつもは嫌がる行為
時折遠慮がちに応じてくれる夜があるせいで
わかっていながらも、つい戯れに求めてみてしまう
今夜は妙にすんなりと、そして大胆に応じてくれた意味を
愚かな俺はようやく知る事になった

「…………」

彼女に非などあるわけがない
何度もそう言い聞かせたけれど
どうしても気にしてしまうのは彼女らしいといえば彼女らしい

「あっ」

俺は彼女を抱き寄せてから、一度その中から抜け出した
戸惑う彼女を強引にシーツの上に組みふせた後
その瞳をじっと見つめ、火照った頬にそっと手を添える

「どちらかというと……俺の方に問題があるんじゃないかな……」
「えっ」
「何か、こう……隙があるとか」
「まさか! そんな事ありませんっ……私の悪い癖……なんです」
「……悪くも……ないけどね?」
「へっ」
「悪くないから……もっと見せて……」
「えっ? あっ……」

彼女の左脚を掴んで高く持ち上げ
その内腿にゆっくりと舌を這わす
一番口付けたい場所に向かって
逸る心を抑えながら焦らす様に遠のいたり近づいたりした

「あっ、やっ、つ、敦賀さん」

いくらでも疑ったり、怒ったりしてくれればいい
その度に君の中が俺の事で一杯になればそれはそれで嬉しい
俺の方が君に嵌り過ぎて、その想いを君にぶつけ過ぎてる気がしてる
それに応えようとする事が君の負担になる位なら、俺はもっと悪い男になった方がいいかもしれない

でも俺は君以外には興味を持つ事さえできない
そんな俺がなれる悪い男はどうしてもこうなってしまうのは許して欲しい

小刻みに震えていた脚から力が抜ける
それに合わせて両脚に手をかけ、大きく開かせた

「あっ、いや…っ」
「明日は予定がなかったよね……」
「あ……りませんけ…ど……敦賀さんは」
「なら、いいんだ」
「よくありま……んんっ」

"忘れられない夜"は、贅沢だなと思える程に在る
でも今夜もまた、そうなるようにと願い
彼女の最も熱く深い場所へと舌を差し入れていく

淫猥な俺を照らすはずの月はいつの間にかどこかへ行ってしまっていて
纏わり付いているのはこの身にどこか馴染んでいる暗闇だけ
彼女の瞳で光る涙さえ、甘い媚薬のように感じ
流れ落ちる汗は、悉く俺を誘う
全てを唇で拾い、指先で絡ませ、俺の所有とし
まともに声も出せなくなってしまった彼女の中に再び潜り込む
泣くようにか細く俺の名を呼ぶ声とは裏腹に
その身体は憎らしい程に刺激的に反応し、俺を悩ませる

少しでも夜を長引かせたい俺に彼女のしなやかな腕が絡みつく
肌を寄せ合い、その耳朶に唇を寄せた瞬間、彼女が小さく囁いた
不意打ちで食らった愛の台詞に鼓動が激しくなり
貪るような勢いでその唇を封じ込める

朝日に咎められる時間が来るまでの間
気がおかしくなるくらい押し寄せてきた快楽の波に二人で溺れた


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