失言─4

2011年05月24日 10:03

失言─4
お昼のテレビ局のカフェテリアで、蓮はトレーに山盛りの食事を端から淡々と口に運んでいた。

「何様だよって思いますよね」
「はぁ……」

社はそんな異様な光景を黙って見つめながら、蓮に言われるがままに、いまいちわからない内容の発言にただ相槌を打っていた。
キョーコとの事で悩んでいた問題は解決したとまでは聞いたが、その原因が蓮の口から語られる事はなく、代わりに社はこのおかしな儀式に強制的に参加させられていた。

「デリカシーってものがないんですよ。まったく」
「あ、あぁ」
「酒のせいにすればいいってものじゃない」
「うん……」
「しかも言った事自体覚えてもいない。どうかしてますよね」
「そ、そうだな……」
「もっと怒ってくれてもいいのに。優しいのは彼女の方です」
「なんだそれ……惚気か?」
「昨日だって俺はまた自分勝手に」
「あー…、なんだ、あの、蓮君?」
「……なんでしょうか」
「少し位、教えてくれてもいいんじゃないかな」

自分に怒っているらしい蓮の、これまでの発言内容からうっすら何があったのかを社は推測はした。
酔った蓮が、なにか心無い事をキョーコに言ったらしい、とまではわかったが、肝心なその内容はさっぱりわからない。
じれったく思った社は、恐る恐る聞いてみたものの、蓮はぴしゃりとそれを断った。

「申し訳ありませんが、至極プライベートな事なのでお教えできません」
「そ、そうですか……んじゃ、その愚痴はいつまで続くのかな……」
「もう少し付き合ってくださいよ。マネージャじゃないですか」
「はぁ……」

取り付く島のない蓮の様子に、社は諦めたように自分の食事を進めたが、目の前の蓮のトレーを見て少し食欲が落ち、溜息をついた。

「それ……全部食う気かよ」
「勿論」
「キョーコちゃんの弁当……はどうしたのかな?」
「彼女だって忙しいんですから、そう頻繁には頼めません」
「いやー…作ってくれるんじゃないの?」
「多分……量が足りないんじゃないかなと」
「へっ」
「空腹なんです。まだ足りない位です」
「あ、あ、そう……」

聞き慣れない蓮の言葉に、社はどう返していいかわからず、言葉を失った。
頑なに食べ続ける蓮の、徐々に悪くなっていく顔色が気に掛かったが、止められなさそうな雰囲気を感じ、社は放置を決め込む。

(反省……なのか? 分かりやすいんだか分かり辛いんだか……)

豪快に、もしくはスマートに、ぺろりと平らげるのならばともかく、目の前の男はどうみても一口一口必死なオーラを漂わせている。

「倒れたりしないだろうな……」
「だ、大丈夫ですよ、これ位」

"大食いの敦賀蓮"は、思っていたよりもイメージが良くないな、と思った社は、できるだけ人目につかないようにと周りをキョロキョロと気にしながら落ち着かない昼食の時間を過ごしていた。


コメント

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  2. Kanamomo | URL | -

    はじめまして!

    はじめまして!コメントありがとうございます。
    うちは携帯に優しくないサイトですよね(汗
    テンプレをちょっと変えてみましたがどうでしょうか。
    引越などがありまして、やる事がちょっとあるとすぐに更新が滞ってしまうダメっぷりがお恥ずかしいですが、よろしかったらのんびりお付き合いくださると嬉しいです♪
    本人は元気ですwご心配ありがとうございます。
    先日はFC2が調子悪かったようですね。ちょうど更新するタイミングで繋がらなくて自分も困っておりました~。
    こちらもご心配おかけしました。FC2が消滅しない限り(笑)ここは消えませんので今後もどうぞよろしくお願いしますv
    お褒めの言葉、ありがとうございます!
    好きだと言って頂けるとやる気がでますっ。
    お忙しいのでしょうか、お体にお気をつけてお過ごしくださいませ。

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