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8.エピローグ

2010年02月06日 08:42

8.エピローグ


「なんだこりゃ、ずいぶんと中途半端な記事だな。お前の名前使いたかっただけじゃないのか」
「そうかもしれませんね」

俳優部主任の松嶋のデスクで、その日発売の女性週刊誌を見ながら松嶋と蓮、社、そして数人のスタッフが記事をみて話をしていた。
派手な文字が並ぶ表紙には"敦賀蓮のマンションに出入りする謎の美女!?"という見出しがいくぶん控えめな大きさで印刷されている。
記事自体もあまり扱いは大きくなく、他の芸能人の嘘とも本当ともつかない話と一緒に羅列される形で、数行の文章と、蓮のマンションに入る直前のスーツ姿の女性の後ろ姿のショットが掲載されていた。

「普通の会社員の女性の写真…ってとこだよな。蓮も知らない人なんだろ?本人見たらびっくりするんじゃないか?」
「抗議がくるかもなー、うちかそれかこの出版社に」
「この女性、マンションの住人の方なんじゃないですか?」
「うーん、さすがに俺もあそこに住んでる人全部はわからないですね」
「記事には"住人ではないと思われる女性"って書いてありますよ。この写真撮った奴、マンションの住人全部チェックしてたんですかね」
「こわいなーそれ、大丈夫なの?法に触れない?」
「どうなのかなぁ」
「マンションの人に迷惑になると困るので、こういうのはやめて欲しいんですが」
「あーちゃんと抗議しておくよ。…きっとずっとお前を張っていた奴なんだろうなぁ。なんのネタもつかめなくてヤケクソでだした記事かもな」
「そうかもしれませんね」

春奈との写真は撮れなかった辺り、少し間抜けだな、と思う蓮だったが、撮られたとしたらまた面倒だったろうし、その間抜けさに少し感謝する。

「"敦賀蓮"の初スキャンダル……にもなってないな。よほどネタがなかったのかなぁ」

そう言う松嶋に記事のことについての対応を頼んだ後、仕事先へ移動しようとした蓮だったが
「時間はまだちょっと早いよな。俺はもうちょっとやることがあるから、お前はど、こ、か、で待機していいよ」
どこかなんて言わなくてもわかるだろ?と言わんばかりの顔で社にそう言われ、蓮は素直に喜んでまっすぐラブミー部の部室に向かった。

行く途中、蓮は奏江と出合った。

「こんにちは、琴南さん」
「敦賀さん…こんにちは」

軽く会釈する奏江は、平静を装っていたが我慢しきれなかったように口の端を歪めるのを蓮は見逃さなかった。

「…なにかな?」
「いえ…なんでもありません、失、礼、しました…」

そうは言う奏江だったが、軽く顔を伏せ横を向いて小刻みに震えており、笑いを噛み殺していた。
全てを知っている奏江には笑われようが何を言われようが仕方がないと諦めている蓮はそれでもなんとなくばつが悪く、軽くコホンと咳払いをした。

「…最上さんはいるかな?」
「いますよ…あの週刊誌見て、今にも卒倒しそうな顔してましたから、何とかしてあげてください」
「そう…ありがとう」

そういってにっこり紳士スマイルで笑って行こうとする蓮に、奏江が
「…あの格好はもうやめさせたほうがいいですか?なんなら別バージョンも考えますが」
と声を掛けた。

立ち止まって少し考えてから蓮は
「いや…もう大丈夫だと思うから。それにアレはアレでいいと思うし」
そう言って今度は最上級の紳士スマイルを炸裂させる。
そんな蓮をみて奏江は少し引き攣った笑顔を返したが、最後は呆れたような顔で
「そうですか…では失礼します」
と再び軽く会釈して立ち去っていった。


蓮がラブミー部の部室に入ると、キョーコが涙目で突進してきた。

「つっ…敦賀さん!!これっどうしましょう!」

例の女性週刊誌片手に大慌てなキョーコを落ち着かせるように、蓮は優しくキョーコの髪を撫でながら
「なにも慌てる必要はないよ。今も事務所のスタッフとそれ見て話してきたけど、だれもキョーコだなんて気づいてなかったよ」
と宥める様に言う。

「そ、そうですか?本当に?……ならいいんですけど…もうこの格好はやめようかな…」
「なぜ?このままでいいじゃないか。急に服装の傾向を変える方が怪しいよ。ずっとこの感じで行けばそのうちあそこの住人だって思われるようになるよ」

もういっそ住人になって欲しいんだけど、と言いたくなった蓮だが、とりあえず我慢しておく。

「そう…でしょうか」
「うん、あのままでね」

そういって紳士な笑顔を浮かべながら、蓮はキョーコの胸を軽く突付いた。

「きゃっ!む、むむむ……敦賀さん!セクハラ!」
「急に小さくなったらおかしいじゃないか」
「どっどどどど、どうせ小さいです!!!ひどいっもう、敦賀さんのばかーー!」

顔を真っ赤にして怒りながらじたばた暴れるキョーコを取り押さえるように抱きしめ、別に胸の大きさなんてどうでもいいんだけどね、と思う蓮はひとり幸せを噛み締めていた。



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