打ち明け話

2010年02月05日 18:52

打ち明け話


それは二人の"初めて"の夜の事。

途中から自分を「キョーコ」と呼び捨てにするようになった蓮に、事が終わってから初めて気がついたキョーコは嬉しいながらも照れくさくて、枕に顔を埋めて恥ずかしがっていたが、ふと昔のことを思い出した。

それはキョーコが蓮の代理マネージャーをしたときの事。
高熱を出して寝込んだ蓮をキョーコが看病していた時に聞いた「キョーコちゃん」。
抱かれたい男No.1で、現在進行形で女性にモテる蓮に、過去がなにもないなどとキョーコは思っていなかったし、ましてやその過去を責めるつもりもなかったのだが、自分と同じ名前、というのがなんだか引っかかってつい「前に私と同じ名前の人とお付き合いしてたんですか…?」などと聞いてしまった。

蓮には最初一体なんのことかわからなかったが、代マネの時の話と聞いて、それはおそらく熱にうなされた自分がつい漏らしてしまったキョーコの昔の呼び方だ、と気づいた。
しかしそれを言うということは自分=コーンであるということで、それはそのまま敦賀蓮=クオン・ヒズリ、クーの息子であると芋ずる式に打ち明けることであり…。
いずれは全てをキョーコに打ち明けるつもりではいたものの、今ここで一気に話すなんて……と、蓮ははさすがに躊躇った。
しかし、このまま誤魔化して変にこじらせて、キョーコに「名前では呼ばないで下さい」などと言われてしまったら!
せっかくどさくさの内に「キョーコ」と呼べるようになったんだ、それは死守したい、と蓮は全てを打ち明ける決心をする。

蓮の口から次々と羅列される衝撃的な事実にキョーコは驚きすきて酸欠になってしまい、慌てた蓮に介抱されたりしていた。
しばらくの間は軽いパニック状態だったが、蓮の腕の中で徐々に落ち着いてきたキョーコは──

あのコーンと再会できていて…そして好きになって…想いが通じて…
今こうして二人でいる…それはまさに奇跡…やっぱりコーンの魔法なんだわ…
──などと考えていて久しぶりにメルヘンの世界へ旅立っていた。

そうしてうっとりしていたキョーコの耳に「これでキョーコに隠し事がなくなったよ」というどこか嬉しそうな、そして安心したような蓮の声が聞こえた。
そして急に自分の"隠し事"を思い出す。

(敦賀さんが全て話してくれてるのに私が隠し事なんて!)

今こそ打ち明ける時、とばかり、勢いよく蓮の腕の中から抜け出すと、神妙な面持ちでベッドの上に正座をした。全裸で。
全裸であることさえ失念して真剣な顔で正座し続けるキョーコに慌てた蓮がパジャマを着せて、一体どうしたのとキョーコに尋ねる。

キョーコは「すいませんっ!私も敦賀さんに隠していたことが!」と、叫ぶように言った。

突然始まったキョーコの告白に驚いた蓮は、隠し事ってなんだ?と必死に想像するがまったく思いつかない。
一瞬、嫌いな男の顔が浮かんだが、それはない、とその想像は打ち消した。
キョーコは真剣な顔で蓮を見つめ、覚悟を決めたとばかりに話し始めた。

「に、鶏の着ぐるみを覚えていますか…?」
「鶏?」

蓮の頭の中に、恋について語っていた鶏の着ぐるみの彼が思い浮かんだ。

「あー…覚えてるけど…ん、キョーコも知ってるの?彼」
「……えっと…あの、実は…」

キョーコは勢いよく頭を下げながら
「あれ、中身私なんです!今まで黙っていてすいませんでしたあああ」
と叫んで号泣した。
「へ?」

最初、なにがなんだかわからなかった蓮だったが
「初めて会った時にすごい失礼なこと言ってしまって」
「敦賀さんが悩んでらっしゃる時に中身がばれてないのをいいことに押しかけたり」
「それに落とせっとかもう、今考えるととんでもないことを」

…などというキョーコの言い訳を聞いているうちにゆっくりと理解していった。

その事実は確かに蓮を驚かせたが、好きな娘本人にあんな相談してたのか、と少し気恥ずかしかったり、あの頃はまったく脈なしだったんだなぁ、俺よくここまで来たな…などと感慨深く思ったりなどしていて怒る気持ちは微塵も沸いて来なかった。
そうして涙目になりながら必死で謝り続けるキョーコの様子を見ているうちに、むくむくといたずら心が沸き上がる。

「もういいから、そんなに謝らなくても。怒ってないから」
そう言って蓮はキョーコに優しく笑いかける。
「ほ、ほんとですか……?」
「びっくりしたけどね、怒ってないよ…でも」
「で、で、でも?」
「キョーコに大嫌いなんて言われてたんだなぁと思うとちょっと傷つくかなぁ…」

蓮はそういってわざとらしく倒れるようにベッドに突っ伏した。

「なっ…!そ、そっ…そんなのはだってもう…随分前のことですよっ…」
「もちろんそうだけど…やっぱり」
「つ、つ、つるがさぁん」

伏せたままの蓮の腕を掴み、ゆさゆさと揺さぶるキョーコ。
そんなキョーコの様子につい顔がにやけてしまう蓮だったが、なんとか表情を立て直した後、むくりと起き上がるとキョーコの横に座り直した。
そして半泣きで、途方に暮れていたキョーコの肩に手を回し、すっと顔を近づけて
「じゃ…今は?」
と妖しく囁いた。

瞬時にぴきっと固まったキョーコだったが、やがて徐々に顔を真っ赤に染めていき、夜の帝王モードの蓮を恨めしそうに横目で睨む。

「も、もう…っ、敦賀さん、また私をからかってましたね?」
「からかってなんかいないよ?…本当に聞きたいだけ……ね、今は?」

帝王モードを崩さない蓮に、キョーコは困ったような顔をして真っ赤なまま軽く俯いていたが、諦めたように囁きだす。

「…だ……」
「だ?」
「……だい、す…き…です…」
「俺も」

キョーコから聞きたかった言葉を手に入れた蓮は、そのままキョーコに深く口付けるとたじろぐキョーコに構わずもう一度ベッドの上に押し倒す。

それから夜が明けるまでベッドの上で絡んでいた二人が、再び目を覚ましたのは予定よりも遅い時間。
慌しく出掛ける準備をする蓮の一方で、その日はオフだったキョーコは今日はちょっと簡単なものばかりですが、といつの間にか律儀に弁当を作っていた。
出掛けにそれを渡され、いってらっしゃいと笑顔のキョーコに見送られて上機嫌な蓮だったが、連絡するのを忘れていたためキョーコのいないだるまやの近くにまで出向いてしまっていた社を迎えにいく羽目になった。

「連絡くれたとしてもさー、お前が弁当持ってる時点でばれるよ?」

社はそう言った後、強引に押し倒しやがったな、キョーコちゃんにいきなりひどいことしてないだろうな、いいか、避妊はちゃんとしろよ?などと蓮が耳を覆いたくなるような小言を山のように浴びせ、その日一日中、蓮で遊びまくっていた。




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