お仕事の後で─1

2010年05月31日 12:20

長編、というよりもシリーズ物?みたいな感じでちょこちょこと短いお話を書いてみようと思います。
蓮とキョーコがドラマで共演、その中でアレコレ、というお話です。
嫌がらせのように(笑)キョーコは蓮の相手役ではありません。
ドラマの内容は軽く触れる程度。あんまり細かく作りこんでいません(汗
他の共演者として、捏造キャラがチラホラ出てきます。

途中で本誌感想やら、他の妄想やらが挟まる気がしますしwどの位続けられるかのも自分でよくわかってません(←なんといういい加減さ
一話完結の形でやりたいと思いますので、のんびりとしたペースではありますが、気軽にお付き合いくだされば幸いでございます。


お仕事の後で─1


「好きの意味を間違えていたんだ……」

「えっ……それってどういう」

「……これ以上言い訳はしない。ごめん、別れてくれ」

俺を見つめる彼女の瞳は大きく見開かれ、今にも涙が溢れそうになっていた。
凍りついた表情で、見る見るうちに顔色を変えていく。
俺は…そんな…彼女に……本当に好きになった女性がいると……最後通告を………

「カット!」

監督の声で緊張した撮影現場の雰囲気が少し緩んだ。
目に涙を溜めたまま、彼女は監督の方を振り向いた。
そんな彼女に監督は「ちょっと休憩しましょう」と軽く声をかける。
彼女は頷いて、セット脇に用意されている椅子の方へと向かった。

「敦賀君、ちょっといいかな?」
「はい……」

もう数回目になる監督と俺の話し合い。
要するに、俺がちゃんと監督の望むように演技できていないという事。

(久しぶりの……ピンチだな……)

それでもあの時とはかなり心境は違う。
何がいけないか、うっすらと自分でわかっているから。

「細かい事ばかり言って申し訳ないけど……やっぱりどこか未練があるように見えるんだ。彼女に対してはすまないという気持ちはあるけれど未練はないんだよ。女性としてではなく妹みたいなものだったんだって自分の気持ちははっきりしているからね」
「はい」
「ちょっと違う印象を受けるんだよね。うーん、そうだな、もうちょっと冷酷さが出てもいいかもしれない。嫌われて悪者になる位の気持ちで」
「わ、かりました……」
「何度も申し訳ないけど……頼むね。じゃ、ちょっと休憩してからもう一度お願いします」
「はい……」

ふぅと溜息をつき、椅子に座り込む俺の横に社さんが居た。
何も言わず黙って立っているマネージャー様に、よせばいいのについ自分から話しかけてしまう。

「言いたい事があるなら言ってくださいよ……」
「うん、今考えてるから」

眉一つ動かさずそう即答する社さんに、俺は思わず脱力してもう一度溜息をつく。
以前、俺がダメだしの嵐に見舞われた時にはオロオロしていた癖に…

「原因がわかってると案外動揺しないもんだよ」

俺だって原因はわかってる。

「素人目には意外といけると思ったんだけど……やっぱりプロの目は鋭いね。普通の人にはわからない微妙な心の乱れが見えるんだなぁ」
「…………」

俺から少し離れた場所に座る彼女にさりげなく視線を向ける。
タオルを手にし、半分顔に当てていた彼女は、俺と視線が合った瞬間にほんの少し困ったように微笑んでみせた。

久しぶりの彼女との共演。
最初、彼女は俺の恋人なのだが、途中で俺は別に好きな女性ができ、彼女に対する想いが本当の愛ではない事に気づいて、別れを告げることになる。

「敵対する役だった時もあったんだから、別に大丈夫だと思ったんだけど……」
「だ、大丈夫ですよ。ちょっと調子が悪いだけです」
「ふーん……それにしちゃ長い時間かかってるけどな」
「…………」

俺のマネージャー暦も長くなり、社さんにはなんの誤魔化しもきかない。
無言のまま考え込む俺の横で、社さんは急に手をぽんと鳴らした。

「よし、いいアドバイス思いついた」
「は?」
「思いっきり振って来いよ。で、その後で派手にへこんでろ」
「はぁ?」
「んで、それをネタに後で思いっきりキョーコちゃんに慰めてもらうんだな。『たとえ芝居でも君にあんな事は言いたくなかった…』とでも言えば」
「それは俺の真似ですか……」

額に手を当て、俯いてそう呟く社さんの姿に俺は呆れ、再び脱力する。

「ん?これじゃ駄目?いいと思うんだけどなぁ」
「……駄目とは言っていません」

現金な事に、その後再開された撮影で俺は一発OKを貰った。



その日の夜、多少無理にでも彼女に部屋へ来てもらおうか、などと考えていた俺に彼女の方から電話が入った。
既に俺の部屋の近くまで来ていた彼女を玄関で出迎えると、そこには目に涙一杯の彼女の姿。

「お芝居だってわかってるのに……ど、どうしても耐えられなくて……こんなの女優失格ですぅ!」

そう言って俺の胸で泣きじゃくる彼女。
俺は慌てて彼女を抱きしめ、宥めるために全力を尽くす事になった。

「芝居だよ?あくまで演技……仕事だからね、仕方がない」
「わかってます……でもどうしてもっ……私はやっぱり女優失格」
「い、いや俺だって多少は…こう…吹っ切れない部分が」
「でもでも、最後にはビシっと決めてらっしゃいました!それなのに私は」
「いや、あれは、その」

後ろめたすぎてうまくフォローできない俺は、それを誤魔化すために必死で彼女を慰める。
予定していた形とは違ったが、欲しかったものを手に入れ、その夜、俺はささやかな幸せで胸が一杯になっていた。




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