ひどいひと。─おまけ

2010年05月10日 18:06

ひどいひと。─おまけ

少し時間があったので、ベッドに入る前に社長から貰ったあのDVDを見ることにした。
見覚えのある教室の中で、机に腰掛ける彼女。
近寄るカメラに振り向いて「うそつき!」という彼女の台詞が聞こえた。

(最初は……カメラ目線で台詞を言っていたのか)

CMとは随分違うな、と思いながらも彼女の演技を見続けた。

「うそつき!」

さっきより大分キツイ感じだ。

「うそつきっ」

ちょっと拗ねた感じか?

「うそつき…」

寂しそうな顔はあまり見たくないな…

「バカ」

単刀直入だな。どこまでが台本にある台詞なのかな…

「もう知らない」

あ、これは可愛い……

「来ないで」

そう言われても、行きたくなる。

「嫌い」

……。

「大嫌い!」

…………。

「だいっきらい!!」

………………。

カメラ目線での彼女の「大嫌い!」に耐えられず、俺はTVの電源を消した。
無言でDVDを取り出し、TVボードの一番奥に仕舞い込む。
とりあえずDVDを持っている、という事で自分を納得させると──携帯を手に取り彼女に電話をする。

「もしもし…」
『もしもし?敦賀さん?……まだ起きてらしたんですか?』

くすくす笑う彼女の声を聞いて、少し気持ちが落ち着く。
さっき電話したばかりなのに、俺は何をやっているんだろう。

───愛しい者の「嫌い」がどんなに胸をえぐるか

先日、父親の事を思い出したせいか、前、父が日本に来た時に社長にぼやいていた言葉を思い出した。

(遺伝子って……怖いな……)

変な所は受け継いでしまった自分を感じ、だったら胃袋だって似ても構わなかったのにと思いながら、今夜の安眠のために彼女の声に耳を傾けていた。




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