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Super Shot

2010年04月23日 18:31

蓮の部屋にパソコン導入しようとしたらバカップルの出来上がり(笑)


起きる時間よりも少し早く目覚めた。
まだ時間があるはず、と思い、隣にいるはずの愛しい温もりに手を伸ばす。
彼女の瞳はまだ開く様子もなく、静かで穏やかな寝顔を見せている。
閉め切ったカーテンが抑えきれない強い朝の光が、まるで淡い間接照明の様な効果をもたらし、彼女の姿を浮かび上がらせた。
白い布地達がそれを飾るように美しい陰影を描いて彼女を取り囲む。
やわらかなカーブで彼女の頬や額にかかる茶色い髪。
彼女がいつも気にする、寝癖で少し跳ねた髪も巧妙なアクセントに見える。

「…………」

伸ばしかけた手を止め、息を殺し、シーツに皺ひとつ残さぬようにしてベッドからそっと抜け出した。
極力足音を立てず、細心の注意を払ってリビングへと入ると自分の携帯を持って寝室に取って返す。
そして携帯のカメラを立ち上げて、彼女の姿をそのフレームに入れた。

(寝ているところを撮ったなんて知られたらきっと怒られるな……)

それでも手に入れてしまえば、後はなんとでもなる。
とにかく今この瞬間の彼女の姿を何か形にしておきたかった。

シャッター音で目を覚ますかもしれない。
もうすぐアラームがなるかもしれない。
切迫した中、一人必死で最高のアングルを探す。
仕事場で出会う、あの大掛かりなカメラ達を今ここに召喚したくなった。
あれは大げさでも、デジカメ位は持っておくべきだった、などと考えながら、これだと思う場所を見つけた。
少しのズレも許さない慎重さで、ゆっくりとシャッターボタンを押した。

「んー……」

目覚めの気配を感じさせ始めた彼女に気づかれないように、携帯をベッドの下にそっと押し込むと不自然にならないように窓辺に向かい、カーテンを開けた。

「おはよう」
「おはよう…ございます……」

待ちかねたとばかりに飛び込んできた太陽の光に、眩しそうに目を細めながら彼女が朝の挨拶をする。
寝起きで少しぼんやりしている顔もいつか形に残したい、などと思いながら可愛いアクセントの付いた髪をかきあげ頬にキスをすると彼女が少し照れくさそうににこりと笑う。
そしてそのまま俺の胸にすりすりと顔を押し付けた。
朝の彼女は普段より甘えん坊だ。
彼女のいる朝の俺は他の誰にも見せられない位緩みきっているだろう。

しばらく俺にくっついて甘えていた彼女はやがてすっきりと目を覚まし「さ、朝ごはん作りますよっ」と元気よく起き出して行ってしまった。
そんな彼女の姿を見送った後、ベッドの下に隠した携帯を取り出す。
撮影した画像に満足し、気分よくリビングに向かったが、途中で急に不安になった。

それは携帯を破壊するやっかいな人物の存在。

最近はそうそう被害にはあわないが、その破壊力が計り知れない事が俺を不安にさせた。
万が一の事態に備えて、手に入れた大事な瞬間の保存方法に頭を巡らせる。
紙の媒体に出力するのが一般的だと思ったが、紙は電子データより劣化が早いような気がするし、誰かに見つかる可能性も高くなる。
そもそも、そういう機器はどういうものがあるのか、携帯で調べようとした時、一番手っ取り早い物を思いついた。



「お、蓮。来たか。頼まれてたもの買ってきたぞ」
「すいません、椹さん」

椹は蓮の姿を見つけると、机の下に置いてあった大きな箱を取り出した。

「とりあえず、店にあった最新の奴を買って見たんだが、これでいいか?」
「別になんでもいいんですよ。ノートパソコンくらい持っていたほうがいいかなと思ったんで」
「まぁそうかもな~、俺も持ってるし、あれば便利だよ。いろいろ設定が面倒だけどお前ならささっと使いこなしそうだなぁ」
「そうですか?……まぁ時間のある時にいろいろやってみますよ」
「どうする、もう車に積んどくか?」
「はい、持って行きます。すいませんでしたね、こればっかりは社さんに頼めなくて」
「確かにそうだなぁ、あいつだと店ごと機能停止にさせそうだもんな」

蓮と椹は洒落にならない図を二人で同時に想像して、乾いた笑い声を立てた。

「でも確か社さんもパソコン持ってるんですよね」
「買う時はやっぱりあの手袋で行ったのかなぁ」
「……極力、触らないようにして説明聞いてから買ったんですよ!箱越しなら壊れませんから」

いつの間にか、やって来ていた社が二人の後で少し怒ったようにそう言った。



「まったく、二人で人の悪口いいやがって」

移動の車内の助手席でぶちぶちと文句を言う社に蓮は苦笑する。

「悪口じゃなくてかわいい噂話じゃないですか」
「どこがかわいいんだよ。苦労してるんだよ、この体質」
「まぁそれはわかりますが……それ利用して俺脅したりした事だってあるじゃないですか」
「はは…まあね…」

急に風向きが悪くなった事を誤魔化すように、社は車の後部座席に積まれたパソコンの箱に目をやった。

「なんで急にパソコン買おうと思ったのさ」
「なんでって……そんな大層な理由はありませんが、普通に持っていた方がいいかなと思いまして」

理由はただ一つだったが、そんな事を口にしようものなら大惨事だと思い、蓮はシラを切りとおす。

「まぁ持ってても悪い事はないな…あーでもあんまりネットとかで変なところ見るなよ」
「変なところ?」
「いや、まぁ芸能人はいろいろと言われるからね」
「あぁそういう事ですか。俺はそういうのは気になりませんが」
「お前はそうだと思ったんだけど……お前の事よりも」

社の言葉の途中で、蓮の眉がピクリと上がる。

「ホラ…想像しただけでその顔だよ。TVに出ている人間は誰だって多かれ少なかれ良くない事を書かれるもんだろ。キョーコちゃんの悪口見たからって激昂すんなよ?」
「し、しませんよ、別に」

でも正直自信がないな、と思った蓮は今回は素直に社の助言に従う決心をする。
できることならそんなものは全て消し去りたいとも考えたが、さすがにそれは不可能な事なのだろう。

「あー…でもあれだな、お前の部屋にあるならキョーコちゃんがお前の悪口見て怒っちゃうとかありそうだなぁ。その辺ちゃんとうまくやれよ~」
「あぁ……そうですね。わかりました」

自分の悪口を見て怒るキョーコの姿を見たい、というあまり褒められたものではない願望が少し蓮の脳裏を掠めた。
しかし、そんな性質の悪い自分はすぐに戒めると、本来の目的だけを考える事にした。



「暇な時は自由に使っていいから」

横からパソコンを覗き込む彼女にそう言っておく。
彼女の写真は既に薄い電子の箱の奥の奥に仕舞い込み、鍵まで掛けてある。
大した事じゃないのに、なぜか犯罪者の様な気分になったのはなぜだろう。
パスワードは"iloveyou"。
これならバレても本望だ。

「敦賀さんは…どんなところを見たりしてるんですか?」
「ん?そうだね……」

なんとなく次の俺の一言で彼女がネットで見る場所の傾向が決まるような気がした。
余計な情報が入らず、彼女も楽しめそうな所を考えた。

「通販…とかかな。いろいろあって面白いよ」
「敦賀さんはあまりゆっくりとお買い物できませんものね……なにか欲しいものとかあるんですか?」
「あぁちょっと……デジカメとかかなぁ」
「デジカメ?」

俺の言葉を聞いて、彼女はなぜかにこっとお日様のように微笑んだ。

「ん?デジカメ欲しかったの?」
「えっ!……いえっあの、あったら楽しいなって思ってただけです!け、携帯でも十分ですし!」
「その内買うと思うから……一緒に写ろうか?」
「へっ」

たちまち真っ赤になる彼女の顔を見て、実現はそう遠くないなと思った俺はだらしない位緩んだ顔であたふたしている彼女を見つめていた。



起きる時間よりも少しだけ早く目が覚めた。
まだ時間があるはず、と思い、隣にいるはずの彼の姿に目を向ける。
彼はまだ起きる様子がなく、静かで穏やかな寝顔を見せている。
カーテンの隙間から差し込む朝の光が、彼の肩から胸元を少しだけ浮き上がらせる。
白いシーツの上に横たわる彼の姿は、まるで映画のワンシーンのよう。
普通に眠っているだけなのに、どうしてこんなに綺麗なのだろうと、その長い睫毛や整った鼻筋、口元に次々と目が吸い寄せられる。
重力に逆らわない自然な流れで彼の顔にさらりとかかる髪。
触り心地のいいその髪の感触を思い出して、しばらく見とれてしまう。

「…………」

息を殺し、不法侵入者のように緊迫した動きでベッドからそっと抜け出した。
極力足音を立てず、細心の注意を払ってリビングへと入ると先日彼が買ったデジカメを手に取り寝室に取って返す。
そしてカメラマンの様に、真剣に彼の姿をそのフレームに入れた。

(寝ているところを撮ったなんて知られたら恥ずかしくて死んじゃう……)

それでもどうしてもこの瞬間を手に入れたい。
こっそり熟読したデジカメの説明書の内容をもう一度思い出す。

シャッター音は消した。
フラッシュもオフにした。
でも、もうすぐ目を覚ましてしまうかもしれない。
切迫した中、一人必死で最高のアングルを探す。
可能な限り近づいて、どうかうまく撮れますようにと神様にまで祈る。
緊張し、手がつりそうになりながら、ゆっくりとシャッターボタンを押した。

まだ彼が目を覚ましていないのを確認すると、再びリビングへと舞い戻る。
撮った画像を確認して、満足し、思わず顔がにやけてしまう。
つい長い時間見とれてしまいそうになり、慌ててデジカメの電源を落とすと、そっと元通りの位置に戻しておいた。

今日の彼はいつも通りの時間に出掛けるはずだけれど、私は少し時間に余裕がある。
彼が出掛けたら、とりあえずこの画像だけパソコンに移動させて、デジカメからは消しておこう。
見つからないようにするにはどうしたらいいのかしら、と考えながらリビングに置かれたパソコンに目をやる。

(あぁ……きっとネットに方法が書いてあるかも!)

まだ操作に慣れていなかったノートパソコンが急に魔法の本のように思えてきた。
なんだかウキウキする気持ちを抑えながら寝室にまた戻る。
目にする前からわかる快晴の空を、気分よく出迎えるためにカーテンに手を掛けた。

「おはようございます!」




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